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会報 詳細

巻頭言 「学会賞」

柳川 堯(久留米大学)

5月の総会で日本計量生物学会賞, 奨励賞, 功労賞の創設が承認された. 若干遅きに失したという感じがするが大変喜ばしいことである. 実現にご尽力いただいた関係理事の方々に心から感謝したい.

計量生物学会会員は真面目かつ謙虚な方が多い. 仕事柄, 他分野の研究者と共同研究されている方が多いが, 他分野の研究者の役に立てば幸せといった感じで満足なさっている方が結構多いようである. 私もそうであった. 2002年に独国フライブルグ市で開催されたIBCの会長演説でNorman Breslow教授が経済学のノーベル賞受賞者の業績をいくつか紹介し, その業績の大半がバイオ統計学ですでに開発され広く知られた手法の再発見や修正的適用に過ぎない, バイオ統計学は医学で不当に低い評価しかされていない,もっと強く自己主張すべきである,と語るのを聞いたとき,頭をぶんなぐられる思いがした. 私はそれまで賞に浅薄さや学問の次元からの逸脱を感じ, いかがわしさを抱いていた. でも, 彼が主張するとおりであると思った. 私どもは, もっと私たちの役割や存在の価値を外に向かって強く主張すべきである. それが優秀な若手研究者を私たちの分野に呼び入れ計量生物学研究の活性化を引き起こしていく原動力となっていくことを強く自覚した.

いま, 嬉しいことにバイオ統計学に対して強い追い風が吹いている. この数年間にバイオ統計学の大学院コースがいくつか誕生した. 最も早くスタートした北里大学薬学部臨床統計コースでは今春3人のバイオ統計学の博士号が授与された. 次いでスタートした東京理科大学医薬統計コースでは約15人修士号が授与された. 新たに今春定員10名のバイオ統計学修士課程が久留米大学大学院医学研究科に設置され(来春に定員5名の博士課程設置予定),同様なコースが国立保健医療科学院に設置された. すでに体制が整備されバイオ統計学の修士・博士号を出してきた実績をもつ広大(大瀧教授),東大(大橋教授),京大(佐藤教授)を加えると特色をもった充実したバイオ統計学の大学院がラインアップした.

若い研究者が伸びていくには豊かな環境と刺激が必要である. 賞を得ることによってよい研究環境が開けることを期待したい. 国立大学が独立行政法人化され, 分野間の競争が熾烈になりつつあるいま, 計量生物学会賞によって受賞者の業績をクローズアップし外に向かってアッピールすることは私どもの研究価値を幅広い研究者に知ってもらうとともに, 新しい職場を開拓し, 研究領域の拡大・発展に役立つことは疑いないであろう. 選考委員会には, すこし無理しても複数の受賞者に毎年賞を出す努力をしてほしいと思っている. 当然のことながら, 賞に対しては賞を出す団体の素性が吟味される. 高々400人程度の団体の賞と聞けば, なあんだ, と思うのが人情であろう. この際がんばって仲間を増やしたいものである. おって, 奨励賞の副賞は万有生命科学振興国際交流財団からいただけることになった. 名前を記して感謝したい.

求む!学会賞, 功労賞の自薦, 他薦

学会賞, 功労賞の自薦, 他薦を下記の様式でお願い致します.

 なお, 奨励賞は日本計量生物学会誌またはBiometrics誌に掲載された論文の著者で40歳未満の本学会員または学生会員の中から選考委員会で選出しますので自薦, 他薦は不要です.

 ・推薦書の様式
 ・A4版1枚に学会賞,又は功労賞推薦書と14ポイントで書き,あとは,10.5ポイントの文字で,
 ・被推薦者名(所属,連絡先)
 ・推薦理由
 ・推薦期日
 ・推薦者(複数の場合は全員の氏名)
 ・推薦者(複数の場合は代表者)の所属および連絡先(住所,Tel, e-mail)をご記入ください.
  なお,資料の添付等はご自由です.
 ・推薦締め切り期限: 平成16年8月25日
 ・推薦書送付先:
  107-0062 港区南青山6-3-9 大和ビル2階
  日本計量生物学会事務局
    学会賞選考委員会 御中

2004年度年次大会のお知らせ

岩崎 学(庶務理事)

日本計量生物学会2004年度年次大会は,応用統計学会,日本統計学会との連合大会として下記の日程で行われます.奮ってご参加下さい.

期 日:2004年9月3日(金)~9月6日(月)
会 場:富士大学
(岩手県花巻市下根子450-3)
情報源:
連合大会ホームページ http://ajss.gr.jp

実行委員会(委員長:早川 毅(富士大学)),企画委員会(委員長:柴田里程(慶應義塾大学),事務局(リーダー:岩崎 学(成蹊大学))を中心に準備が進められています.計量生物学会からは渡邉裕之,山岡和枝の両企画担当理事および岩崎学庶務理事,椿美智子会計理事が上記委員会に参画しています.
大会初日の9月3日にはチュートリアルセミナー,学術会議シンポジウム,市民講演会が予定されています.また,一般講演セッション,企画セッション,コンペティションなどが計画されています.宿泊情報を含む詳細は上記ホームページをご覧下さい.
 また,大会期間中に2004年度5月の総会で承認された日本計量生物学会賞,奨励賞,功績賞の各賞の表彰も行なわれる予定です.

日本計量生物学会シンポジウム報告

2004年5月に久留米大学で行われた日本計量生物学会シンポジウム並びにチュートリアルセミナーの概要を紹介いたします.

チュートリアルセミナー紹介

ルポ:渡邉裕之(万有製薬)

繁桝算男,大森拓哉,
森一将(東京大学大学院総合文化研究科)
BUGSによるベイズ統計学入門:


初めての企画として,受講者がノートパソコン持参して,解析の演習が行われた.
プログラム(http://www.mrc-bsu.cam.ac.uk/bugs/winbugs/WinBUGS14.exe) を各受講者のパソコンに,事前にダウンロードしての実施であった.最初の1時間は,繁桝先生によるベイズ統計の基本を中心とした初心者にも解りやすい講義であった.次の2時間は,大森先生と森先生によるBUGSの演習であり,具体的には,プログラムの立ち上げから,プログラム作成(モデルの作成,データの入力,パラメータの初期値の設定など),プログラム実施,各種統計量の表示,パラメータ収束の判断などに関するものである.演習中は,プログラム作成に際し発生する各受講者からの疑問に対し,講師が返答するよう配慮がなされたので,受講者全員の理解を深めるのに役立ったと思われる.
繁桝先生,大森先生,森先生,この度は懇切丁寧なチュートリアルのご講演ありがとうございました.


特別セッション
プロフェッショナル・バイオスタティスティシャン人材養成
座長:松浦正明(癌研・ゲノムセンター)


大橋靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
JUSE(BioSコース)と東大の経験:


わが国において生物統計学の重要性が認識され始めたにもかかわらず,不十分な教育システムしか持たない当時の状況を改めるために,先駆的な指導者として奮闘努力されてこられた大橋先生が最初の演者として講演された.1989年に日本科学技術連盟(JUSE)において「医薬データの統計解析専門コース(通称BioS)」が発足し,1992年の東京大学医学部健康科学・看護学科に初めての疫学・生物統計学の講座が開設された当時の状況などの歴史的背景を紹介され,東京理科大学のコース誕生の背景となった大学院教育における計量生物学会での議論や,最近のBioSの展開について紹介された.また,今後も人材養成に貢献するために,ミッションとカリキュラムの見直しを重視して企業の統計家を育成していかなければならない点を指摘され,歴史的貢献を果たされた多岐にわたる膨大な内容を報告された.


浜田知久馬(東京理科大学工学部)
東京理科大学医薬統計コースにおける2年間の経験:


2002年4月から東京理科大学で社会人を対象とした大学院のコースが設立され,吉村功教授と共にカリキュラムの作成や実質的な指導に当たられてきた浜田先生が講演された.コースの特徴として月に3日の集中講義方式を採用し,仕事を持つ社会人が通いやすいように配慮され,最新の医薬統計学の幅広い理論面をカバーするため多くの大学から一流の講師を招聘され開設されている様子が紹介された.さらに医薬統計コースの修士卒業生のアンケート結果を紹介する形でコースの現状を分析され,生物統計家としての基礎知識,将来の新たな課題に対する自力解決の態度・方法論が卒業生に習得されている点などが示された.現在の医薬統計コースではスタッフの数が明らかに不足しており,早急にスタッフの数を増員する事が短期的な課題であり,ゲノムや環境問題等の新たな課題を解決できる研究者の育成が長期的課題であると指摘された.


角間辰之(日本赤十字九州国際看護大学)
アメリカの人材育成制度とカリキュラム:


アメリカのエール大学でバイオ統計学を専攻しPh.Dを取得され,コーネル大学にて臨床試験プロトコル作成や,臨床研究センター内のBiostatistical Coreで様々な実務に携わり,現在久留米大学バイオ統計学群にてもバイオ統計センター長の柳川堯教授と共に統計教育を開始された角間先生が,ご自身のアメリカでの経験,エール大学におけるバイオ統計教育と人材養成制度など,コミュニケーションスキルの重要性など様々な観点から紹介された.また,わが国での人材育成では,数理統計学者の不足ではなく,臨床試験の現場で活躍できるプロフェッショナル・バイオ統計スタティスティシャン専門家が不足している事を指摘された.さらに平成18年に博士課程の開設を予定している久留米大学バイオ統計学群の紹介を行ない,国際的基準に準じるバイオ統計教育の実施,バイオ統計プロフェッショナルの育成,バイオ統計学研究体制の拡充,バイオ統計についての啓蒙を目的とした教育現場を報告された.
特別セッション会場にはJUSE(BioSコース)の修了生も多く参加されていることが確認された.最後の総合討論では,実際の教育方法,カリキュラムの問題などに関して質問があった.また製薬企業からの現状の取り組みに関する発言や,柳川会長からも特別セッションとして当テーマを選んだ背景などの貴重なコメントを得ることができた.

一般講演Ⅰ報告
座長 大瀧 慈(広島大学)
熊 国経,垂水共之(岡山大学)
ライントランセクト法による生物の密度推定について -カーネル関数とバンド幅の選択:


ライントランセクト法の適用によるオブジェクトの分布密度の推定の際のカーネル関数とバンド幅の選択について,シミュレーション実験により考察された.その結果として,半正規探知関数の場合,MISEのバンド幅を使ったガウスカーネル関数と,LNOのバンド幅を使ったガンマカーネル関数が良いこと,また,指数探知関数の場合,MISEのバンド幅を使ったガンマカーネル関数が良く,LNOのバンド幅を使ったガンマカーネル関数がやや良いということについて紹介された.
この講演に対して,本研究の結果は個体が対象とする領域において一様に分布していることを前提として得られたものであり,その前提がない場合について,どの程度の普遍性が期待できるのか疑問であるとの意見が出された.実際のデータの解析では,個体の空間分布が一様分布と見なされない場合も十分想定されるのではないかとの問題提起も行われた.


本多正徳,岸野洋久(東京大学)
合体過程を通したハマダラカ集団履歴の推定:


東南アジアに分布するAn. dirusは,7亜種からなるが,森林に生息する主な集団A,Dについて集団サイズの履歴を推定した.合体過程のモデルを適用した結果,2集団ともにPiecewise Expansion model が選択されたが,集団Aは集団Dの2倍の成長率を持っていた.スカイラインプロットによるノンパラメトリック推定により,モデルの適合度を検証した結果,集団Dにおいて20万~40万年前の氷河期における有意なボトルネックが検出された.20万年以降に限って成長率を比較した結果,両集団に有意な差は見られなかった.
この講演に対して,個体数の変動に関するパラメトリックなモデルについて,非単調性構造を有するものを用意すべきではないか,という意見やブートストラップ法の適用について,改善の余地があるのではないかという意見が出された.


Leonardo de Oliveira Martins,岸野洋久(東京大学)
Distribution of Rate Variability among Genes in Saccharomyces Genomes:

進化速度のレベルとその変動は,異なる選択圧と機能的制約,突然変異率と世代時間の変化の影響を受ける.速度変化の確率モデルを事前分布に導入することで,階層ベイズモデルの適用による頑健な速度と時間の推定方法について論じられた.また,ベイズ推定における不確実性を考慮に入れ,超パラメータで表現される進化速度の変動度のゲノム内における分布の推定が試みられた.重要度サンプリングにより,一時解析のMCMCサンプルを用いた周辺尤度の導出法が論じられ,その応用として,7つのSaccharomyces種からの106の相同遺伝子について,Candida albicans種を外群としたデータ解析の実例が紹介された.そして,さらに多くのゲノムが解析されれば,速度とその変動の相関を推定することの可能性が論じられた.
この講演に対して,研究の背景に関する内容や,ベイズ推定における事前分布についての質疑応答が行われた.


古賀 正(株式会社新日本科学),金藤浩司(統計数理研究所)
カニクイザルの血液学的及び血液生化学的検査項目の基準範囲について:


本報告では,栄養条件・飼育条件等を制御したカニクイザルの血液学的及び血液生化学的検査項目の基礎データを示すとともに,ある簡便なモデルに基づく解析により健康状態等の把握,動物試験を評価する際に参考となる基準範囲が提示された.この講演に対して,データの経時的構造を考慮した成長曲線モデルの適用により,測定誤差と本質的な個体差の分離を行い,より精確な分析が可能ではないかという意見が出された.


一般講演Ⅱ報告
座長 安楽和夫(西南学院大学)


このセッションでは, 5件の研究発表があったが, 開始時間が遅れたこともあり, 残念ながら質疑応答の時間を短縮せざるを得なかった. 各発表の概要は次のようである.

冨田哲治(広島大学)
多変量離散応答モデルの近似尤度に基づく推測:


一般化線形混合モデルは,指数型分布族の母数にランダム効果を導入することで,過大分散(over-dispersion)や相関構造を表現したモデルである.このモデルの確率密度関数は多重積分で表現され,その評価にはこれまで数値積分やMCMCなどの数値的最適化が用いられてきたが,その計算量の多さゆえに次元が高い場合は実際のデータ解析への適用には難がある.この発表では,一般化線形混合モデルの確率密度関数の近似公式を導出し,この近似式をもとに推測問題を解析的に扱えるような多変量離散分布を構築する方法について報告が行われた.


島本武嗣(広島大学)
死産背景要因の探索:


我が国の最近の死産率は全国平均的にみて減少傾向にあるが, 社会的, 環境的背景要因についての詳しい検討はまだ行われていない. この発表では, 死産リスクに関連する背景要因を探るため, 母親の年齢, 嫡出子, 非嫡出子をリスク要因と考え, 自然および人工死産別に, さらにそれぞれを嫡出子および非嫡出子に分けて解析が行われた. また, 母親の年齢の影響を除去するため, 市区町村別標準化死産比を求め, その地理分布を視覚化する方法について報告がなされた. またこれにより, 嫡出子における自然死産の危険度が, 中国地方, 東海地方で低く東北, 北海道, 九州の山間部でやや高めであることが示唆された.


大倉征幸,鎌倉稔成(中央大学)
ロジスティック回帰における最尤推定量の性質について:


ロジスティック回帰モデルは医薬分野の統計解析でよく利用される手法である. その際,回帰係数の推定は最尤法を用いることが多いが,最尤推定値はある条件の下では存在しないことが知られている. 又,最尤推定値が存在したとしても,その結果が妥当でない場合もある. 正確なロジスティック回帰による推定は, 最尤推定量が存在するが,その結果が妥当でない場合に有用な推定法であるが,並べ替え分布による推測のため,標本数が多い場合はかなりの計算時間を要する. この発表では, 最尤推定値を正確なロジスティック回帰による推定値で補正する方法が考察され, 数値計算の結果が報告された.


竹ノ内一雅(藤沢薬品工業株式会社), 浜田知久馬,吉村 功(東京理科大学)
関節リウマチ臨床試験に即した脱落を考慮した解析法の研究:


この発表では, 欠測値のある関節リウマチ薬の臨床試験データの統計的解析法についての研究報告が行われた. 取り扱われた事例では, 欠測が完全ランダムではなく,MAR(Missing At Random)に近いメカニズムで欠測が生じ,また欠測率が試験群間で大きく違っているので,被験薬の薬効を評価する統計解析では,欠測による偏りの補正が必要である.そこで完全例だけで薬効を評価するCOMP法,脱落前の最後の測定値を用いるLOCF法,母数の推定において観測確率の逆数を重みにするIPCW法の3法を,モンテカルロ・シミュレーションで比較した結果,薬効の推定値の偏りと精度の両方において,LOCF法が優れているという結果が得られた. そこで, LOCF法を用いて薬効パラメータの推定を行った結果,被験薬が関節リウマチの症状を軽減するというCOMP法を用いた解析結果の妥当性が裏づけられた.
なお, 欠測の生じる確率メカニズム(MAR)のパラメータの微妙な変化で結果が違ったものになる可能性についての言及もあった.


北田修一(東京海洋大学),岸野洋久(東京大学)
集団構造がある場合の連鎖不平衡と遺伝的分化の同時推定:


この発表では, 遺伝子母集団に集団構造がある場合に, 連鎖不平衡と遺伝的構造を同時に推定する方法が提案された. この方法では, 階層モデルによって分集団構造を考慮し, 地理的標本に基づいてメタポピュレーションにおける遺伝的分化と連鎖不平衡の大きさが推定される. ただし, それぞれの地域や分集団では個体はランダムに交配し, Hardy-Weinberg平衡が成り立っていると仮定する. またマーカー間の独立性は仮定せず, 連鎖の状態については不明とする. 提案された方法は, 一般的な遺伝マーカーの頻度データに適用できることが示唆された. また提案された方法と古典的方法とのシミュレーションによる比較評価, 並びに, アユのアイソザイムと人類のALDH2遺伝子のSNPsの実データへの適用結果が報告された.
なお,過大分散(over-dispersion)を生ずる事前分布(この発表ではDirichlet分布)の一般化の可能性についての質疑応答があった.


一般講演Ⅲ報告
座長 佐藤俊哉(京都大学医療統計)
北条誠一郎(東レ),浜田知久馬,吉村 功(東京理科大学)
HCV動態の数学モデルに基づく測定時点設計に関する研究:

C型肝炎の治療薬開発時にウイルス動態試験を実施して,効果を確認することは有用である.しかし,そのためには採血を経時的に頻回行わねばならない.しかし,頻回採血が患者に与える負担を考慮すると,できるだけ採血回数を減らす計画を立てる必要がある.本研究は,C型肝炎ウイルス感染(HCV)に対するインターフェロンの治療効果について,ウイルス増殖過程,薬剤効果をコンパートメントモデルで表したHCV動態モデルを用いて,インターフェロンに併用する免疫調整剤を想定して,ウイルス動態をある程度の精度で推定し,かつ患者の負担が軽減される最適な採血間隔をシミュレーションにより調べたものである.この動態モデルの妥当性について,現実のデータでのあてはまりはどうか,インターフェロンの免疫学的作用が1パラメータで表せるのか,性・年齢.遺伝的素因といった個人間のばらつきはどのように影響しモデル中にどう考慮するのか,といった討論がなされた.


斎藤有希(ヤンセンファーマ),寒水孝司,浜田知久馬,吉村 功(東京理科大学)
精神症状評価の信頼性試験における被験者数と評価者数の統計的検討:


主観的評価が必要となる臨床領域では,評価尺度の信頼性を検討する試験が実施されるが,複数の評価者が各被験者を1回評価する場合に級内相関係数の推定精度を保証するためのサンプルサイズ設計について検討を行った.その結果,評価者数×被験者数を固定した条件下で最適な組み合わせは,誤差分散と評価者間分散の相対比(評価者間分散/誤差分散)に依存し,相対比が大きくなると評価者の数を増やした方が級内相関係数の推定精度が高くなった.相対比に関する情報が不確かな場合には,評価者数と被験者数をほぼ等しくとると,相対比が大きく分散が最大になるケースで分散が最小になり,マキシミン的な意味で良い試験デザインであることが報告された.級内相関を信頼性の指標として用いる場合,被験者間分散が大きい場合,級内相関は大きな値となる.このことから多様な被験者を選べば級内相関は大きくなることが予想されるが,信頼性を検討する試験で多様な被験者を選ぶべきかどうかについて質問があり,実際の臨床試験に参加する対象者に近い集団を想定すべきであるとの回答であった.


叶 健,寒水孝司,浜田知久馬,吉村 功(東京理科大学)
主要評価変数が2つある検証的臨床試験における症例数設計:


主要評価変数が2つある場合,それぞれの変数について片側有意水準2.5%,検出力80%で対象者数を設計し,そのうち大きい値を用いる方法は,評価変数同士の相関を考慮していないため検出力が確保されない場合があり,2つの主要変数の相関を考慮したサンプルサイズ設計法を提案した.数値計算の結果,被験薬群と対照薬群の標準偏差に対する平均の差が主要評価変数間で大きく異なるときは上に述べた方法でよいが,そうでないときは相関係数を考慮しないと保証すべき検出力が確保されないことが明らかになった.提案した方法に対し,これまでに提案されている多変量片側検定との関係について,また従来行われている方法に対し対立仮説の多重性からベータレベル調整の必要性について討論があった.


堺 伸也(イーピーエス),浜田知久馬,吉村 功(東京理科大学)
臨床試験における中間解析での対象集団の再評価デザイン:


臨床試験の対象集団には,新しい治療法が有効な集団と有効でない集団が混在していると考えられるが,どの部分集団に有効でないのかは,通常試験が終了するまでわからない.そこで,試験途中で中間解析により,有効でないと考えられる部分集団を特定し,その集団については登録を終了し,有効だと考えられる集団のみ登録を継続し,かつアルファレベルが保たれるデザインの提案を行った.どの部分集団が有効でないかは事前にわからないため,このデザインを実際の臨床試験に適用する際,どのような状況が考えられるかについて討論があった.


高橋行雄(中外製薬)
製薬会社における統計再教育の試み:


製薬会社で臨床試験に関与する人たちを対象にした統計教育を試みてきた結果,慶應SFCにおいて大学1年次に行なわれている「データ分析」の教育スタイルが,製薬会社における統計再教育にも効果的であった.これは,身近にあるデータを統計ソフトJMPを用い,実際にデータを分析するプロセスから実践的な統計知識の習得をはかる教育法である.臨床試験の科学的研究法と対比しつつ,各週で6日間の講義・演習・宿題に加えて,一人一人に自由なテーマによる統計的仮説検定をベースにした分析プロジェクトを課している.7日目が学会形式での発表会であり,全員にプレゼンを課し相互投票による評価を行なっている.これにより,統計の実践力の向上がはかれた.本報告の内容の一部について,日本計量生物学会も同じ見解であるのか,という質問がありましたが,日本計量生物学会に限らず,一般に学会発表とは個人の自由な研究活動であり,発表者の責任においてなされるものだと考えます.

計量生物セミナー実施案(速報)

上坂浩之(企画担当理事)

次のような計量生物セミナーの実施を検討中です.ご意見などあれば事務局にお寄せ下さい. 日時(案)
2004年12月15日(水)13:00-17:30
        16日(木) 9:00-12:00
場所(案)
スペースアルファ(神戸市北区)

内容
CPMPではICHE-9ガイドラインを受けて,そこで十分に議論されていない事項について,規制当局の審査官が審査にあたって留意すべき事柄を解説する手引き(Points to Consider; PtC) を作成している.今までに公表されているPtCは以下の通りである.今回はこのPtCの内容を出発点として,関連する問題を幅広く議論することとする.

1.Points to consider on adjustment for baseline covariates.
2.Points to Consider on Missing data.
3.Points to consider on Switching Non-inferiority and Superiority.
4.Points to Consider on Choice of Delta.
5.Points to Consider on Multiplicity Issues in Clinical Trials.


各PtCについて,話題提供者1名が,PtCの内容の主要な点を解説するとともに,問題点あるいは争点を提示する(30分).これに対して予め指名された2名の討論者が意見を述べる(各15分).2名の一人は試験統計家,もう一人は総合機構の統計審査官または大学あるいは研究所の研究者とする.その後質疑応答ならびに参加者を含めた全体討論を行う(45分).


(1)Points to consider on adjustment for baseline covariates + Points to Consider on Missing data.
(2)Points to Consider on Multiplicity Issues in Clinical Trials.
(3)Points to consider on Switching Non-inferiority and Superiority + Points to Consider on Choice of Delta.

2004年度日本計量生物学会総会報告

日 時:2004年5月27日(木)12:40 - 13:10
場 所:久留米大学医学部築水会館

総会開会に先立ち当日の出席者45名および書面での委任状(77通)の合計122名の出席を得,会則第19条 (1) の規定の定足数(正会員数386名の1/5以上で78名)を満たして総会が成立していることが確認され,柳川会長を議長として以下の議事が進行した.議案は,
1.2003年度活動報告
2.2003年度決算報告
3.2004年度活動予定
4.2004年度予算案
5.会則の改定および細則の制定
6.2005年度年次大会について
7.その他
であった.以下に議事進行の詳細を報告する.
なお,決算・予算の報告は,本ニュースレターの最終ページに添付した.(※)
(※)詳細につきましては、kaiho85.pdf をご参照ください.

議 案
1.2003年度活動報告
 岩崎庶務理事より以下の活動報告がなされ,承認された.

(1) 役員の構成
 選挙ならびに推薦により選出された以下の各理事により2003年度の会務を遂行した.
会長:柳川 堯
庶務:岩崎 学,林 邦彦
会計:岸野洋久,椿美智子
編集:佐藤俊哉,三中信宏
会報:椿 広計,山岡和枝
ホームページ:折笠秀樹
企画(年会):丹後俊郎,渡邉裕之,上坂浩之,山岡和枝
企画(シンポジウム):吉村 功,大橋靖雄,井元清哉,松浦正明
組織:大瀧 慈,松山 裕
国際:柴田義貞,佐藤俊哉,三中信宏
学術会議:大瀧 慈
なお,監事は魚井徹,柳本武美の両氏であった

(2) 年次大会
 2003年度年次大会を,応用統計学会,日本統計学会との連合大会として2003年9月2日(火)~9月5日(金)に名古屋市の名城大学天白キャンパスにおいて開催した.特別講演,企画セッションおよび一般講演セッションの他,若手研究者によるコンペティッションも行なわれた.大会への参加人数は,会員(共催3学会および後援学会員)515名,非会員86名,学生138名で,学生の参加数の増加が目立った.
 大会初日の9月2日の午後にチュートリアルセミナーが行なわれた.2テーマ並行開催で片方のテーマは「実験研究および観察研究における偏りの調整」と計量生物色の強いものであった(もう1つは官庁統計).参加者は,会員(同上)135名,非会員40名,学生25名で,それ以外に資料集のみの販売が60件あった.
 チュートリアルセミナーの後,「教育と統計」のテーマで市民講演会が開催された(無料).

(3) 総会
 2003年度総会を2003年5月27日(火)の12:00 - 12:40に統計数理研究所講堂にて開催し,2002年度活動報告および決算報告,2003年度活動予定および予算案,会則の変更(2003年度よりの会費の改訂に伴う必要な措置),およびその他の議事を議論した.

(4) 計量生物シンポジウムとチュートリアルセミナー

 計量生物シンポジウムおよびチュートリアルセミナーを以下の要領で共に統計数理研究所(東京都港区南麻布4-6-7)にて開催した.
・チュートリアルセミナー
日 時:5月27日(火) 9:00 -11:00
テーマ:疫学・臨床研究における因果推論
講 師:佐藤俊哉(京都大学),松山 裕(東京大学)
・計量生物シンポジウム
日 時:5月27日(火) 11:10 - 17:40
テーマ:生命情報科学
特別セッション:遺伝子に関する統計解析上の諸問題
一般講演:7題

(5) 学会誌の発行
 「計量生物学」第23巻2号を5月に,第24巻1号を8月に発行した.原著4報,フォーラム1報,および奥野忠一,工藤昭夫の両会員の追悼記事で,計85ページであった.その他にシンポジウム記事などが掲載された.

(6) ニュースレターの発行
 ニュースレター No. 82 (2003. 2),No. 83 (2003. 8) を発行した.なお,No. 83より郵送での発行を再開した.

(7) 理事会
 対面理事会を1月11日,4月26日,9月3日の3回開催し,会務の遂行上の種々の案件について議論した.また,E-mail理事会を2月1日,2月11日,3月24日,3月31日,9月29日,10月23日の6回開催し,同じく会務の遂行上の種々の案件について議論した.

(8) その他
 関連学会からの後援ならびに協賛依頼に対し,適宜対処した.


2.2003年度決算報告
 椿(美)会計理事より2003年度決算報告(本総会報告に添付)の説明があり,魚井徹,柳本武美の両監事による監査の結果適正な会計であるとの会計監査報告が魚井幹事より行なわれ,決算報告は承認された.


3.2004年度活動予定
 岩崎庶務理事より以下の2004年度活動予定が示され,承認された.

(1) 役員の構成
 柳川堯会長以下2003年度と同じ役員にて会務を遂行する.

(2) 年次大会
 日本統計学会,応用統計学会と合同の連合大会を2004年9月3日(金)から9月6日(月)にかけて富士大学(岩手県花巻市)にて開催する.

(3) 計量生物シンポジウム,チュートリアルセミナーおよび総会

 日本計量生物学会シンポジウムを2003年5月27日(木)に久留米大学にて開催する.また,前日の5月26日(水)に同所にてチュートリアルセミナーを開催する.

(4) 学会誌の発行
 「計量生物学」第24巻2号,第25巻1号,同2号および過年度開催の計量生物セミナー記録の特別号を発行する.

(5) ニュースレターの発行
 No. 84以降の号を電子配信もしくは郵送にて発行する.WEBにも掲載する.

(6) 理事会
 理事会(対面理事会,E-mail理事会)を適宜開催し,会務遂行上の諸点を議論する.

(7) 学会賞の授与
 この後の会則改定案の承認を条件として,日本計量生物学会の各賞の授与を行なう.

(8) 選挙
 この後の会則改定案の承認を条件として,会長および評議員選挙を行なう.

(9) その他
・セミナー,研究集会など計量生物学の発展に資する催しを開催,協賛,後援する.
・メーリングリストの活用など,学会の活性化ならびに会員へのサービス向上に向けた取り組みを積極的に推進する.
・統計関連諸学会協調のための間の種々の議論に参加する.


4.2004年度予算案
 椿(美)会計理事より2004年度予算案(本総会報告に添付)が示され,承認された.


5.会則の改定と細則の制定
 岩崎庶務理事より会則改定案および細則案が説明された.その骨子は (a) 評議員制の導入 (b) 各種学会賞の制定 (c) 文言の整備である.これらの案は予め郵送にて各会員に提示されていたものであり,理事会提案どおり承認された.
 承認後,柳川会長から,本年9月の年次大会時に授与したいので,会員諸氏より受賞候補者の自薦および他薦をお願いしたいとの要請があった.


6.2005年度年次大会

 柳川会長から2005年度の年次大会につき,以下の理事会案が提案され,承認された.

(1) 日本統計学会,応用統計学会などとの連合大会として開催する.

(2) 開催時期,場所については連絡委員会の議論に委ねる.


7.その他
 出席者の皆さんから上記議案以外の議案の提案を募ったが特に提案はなかった.
以上の議案をすべて承認した後,柳川会長から7月に豪州ケアンズで開催されるIBC2004への参加の呼びかけがあり,閉会した.

理事会報告

2003年度第3回理事会議事録
日 時:2003年9月3日(水)18:00 - 21:00
場 所:名城大学天白キャンパス10号館会議室
出席者:柳川,井元,岩崎,上坂,大瀧,大橋,折笠,岸野,椿(美),松浦,松山,吉村,渡邉.
欠席者:佐藤,柴田,丹後,椿(広),林,三中,山岡(委任状6通).

議 事
1.前回議事録の確認
  第2回対面理事会の議事録を確認した.

2.2004年度のシンポジウム
  福岡近辺での開催はどうかという提案があった.中心となって企画・運営を担当する理事として松浦理事が選ばれた.テーマ名として「プロフェッショナル・バイオスタティスティシャン人材養成」とすることを内定した.開催期日としては,5月下旬にチュートリアルを入れて1日半くらいを予定する.

3.2004年度連合大会
  岩手県花巻市の富士大学にて9月初旬に開催の予定であることが紹介された.年会担当は, 渡邉理事と山岡理事にお願いすることになった.統計関連学会の連合に対するスタンスとして独自の活動を目指すこととした.

4.学会組織の検討
  大瀧理事より,評議員制の導入および学会賞などの導入に関して資料を基に説明があった.会長および理事の選出法を含めてさらに検討を加え,2004年度の総会に出せるよう会則の整備などを行なうこととした.

5.学会賞の設定
  学会賞として,奨励賞,学会賞,功労賞を設定することになった.これらを2004年度の総会に提案出来るように,会則の整備などを含めて以上の決定に基づく方向でさらに議論を深めることとした.

6.第19期日本学術会議統計学研究連絡委員会委員の選出
  議論の結果,岸野洋久理事を選出した.

7.日本計量生物学会名誉会員の選出
  2004年度の総会で功労賞の設定を承認して貰い,2004年度の連合大会で表彰できるよう作業を進めることとした.

2003年度第5回e-mail理事会議事要録
標記e-mail理事会が2003年9月29日~10月10日にかけて行なわれ,以下の議事について審議した.

議題:
評議員制の導入と学会賞の創設に関して

  組織担当の大瀧理事,松山理事による原案について審議した.
  なお,計量生物学会メーリングリストについて,三中理事の開設によるメーリングリスト活用が促された.


2003年度第6回e-mail理事会議事録
標記e-mail理事会が2003年10月23日~11月7日にかけて行なわれ,以下の議事について審議した.

議題:
評議員制の導入と学会賞の創設に関して

  第5回e-mail理事会での議論を踏まえ,改定案をさらに審議した.


2004年度第1回理事会議事録
日 時:2004年3月22日(月)13:00 - 16:00
場 所:東京理科大学工学部経営工学科会議室
出席者:柳川,井元,岩崎,大瀧,岸野,佐藤,柴田,丹後,椿(広),椿(美),林,松浦,山岡,吉村,渡邉.
欠席者:上坂,大橋,折笠,松山,三中,(委任状3通).

議 事
1.2003年度活動報告

  岩崎理事より説明があり,了承された.

2.2003年度決算報告
  椿(美)理事より説明があり,了承された.

3.2004年度活動予定
  岩崎理事より説明があった.概ね例年通りであるが,それに加え,計量生物セミナーなどの実現に努力すること,会員増強に努めること,名簿を作成することが確認された.なお,新会員募集のパンフレットも作成する.

4.2004年度予算
  椿(美)理事より説明があった.収入に関しては案どおりでよいが,支出として学会賞の予算見直しおよび名簿作成にかかわる費用を計上することで了承された.

5.2004年度シンポジウムとチュートリアルセミナー
  松浦理事より説明があった.予定通り久留米大学にてチュートリアルを5月26日(水)午後に,シンポジウムを5月27日(木)に開催の方向で準備が進んでいる.

6.2004年度連合大会
  岩崎理事より,9月3日(金)から6日(月)にかけて岩手県花巻市の富士大学での開催に向けて準備が進んでいる旨が報告された.

7.評議員制の導入と学会賞の創設
  大瀧理事より説明があった.評議員の選出方法としては全国を東日本と西日本に分け20名ずつ計40名を選挙する方法を取ることとした.理事の定数は会長を除き15名とし,監事は理事以外の評議員から選出する旨を明記することとした.それに伴う選挙の実施日程が議論された.また,学会賞授賞のための組織ならびに方法について議論した.

8.2005年度連合大会への参加の可否
  2005年度も連合大会として年会を開催するかどうかについての話し合いが行なわれ,計量生物学会の独自色が出せるようすることを条件に連合大会への参加を決めた.

9.統計関連学会の連合化
  連合についての話し合いに今後もかかわっていくことは是とされた.連絡委員会の下部組織である事業・広報委員会委員として丹後理事を選出した.

2004年度第2回理事会議事録
日 時:2004年5月26日(水)18:00-20:20
場 所:久留米大学バイオ統計センターセミナー室
     (久留米大学医学部基礎B,C棟7階)
出席者:柳川,岩崎,上坂,大瀧,折笠,佐藤,椿(美),松浦,吉村,渡邉.
欠席者:井元,大橋,岸野,柴田,丹後,椿(広),林,松山,三中,山岡(委任状9通).

報 告:
1.佐藤編集理事より学会誌の刊行状況が報告された.
2.松浦企画理事よりチュートリアルの出席者が57名であったことが報告された.

議 事:
1.前回議事録の確認
  議事録原案どおり承認された.

2.総会の議案について
  総会にかける議案について議論した.会則改定案および細則案について再度確認したが,会長が不信任された場合についての措置については問題を残しているため今後考えることとした.
  2003年度決算および2004年度予算に関しては,前回対面理事会での資料に若干手を加えたものを総会に出すという報告があった.

3.2005年連合大会について
  計量生物学会としては,学会の顔が見えることを前提に2005年度の連合大会に参加することとした.

4.統計関連学会の連合化について
  統計関連6学会の会長,理事長が集まって作成した.連合規定を了承した.

5.新しいシンポジウムの企画について
  科学研究費との共催で7月15日にシンポジウムを実施するとの提案があり,共催を了承した.

6.理事の旅費援助について
  必要に応じ出せる範囲内で理事の旅費の援助ができるようにした.旅費が必要な場合は予め申し出てもらい,会長と会計理事の判断で支出することとした.

7.IBC 2006の援助について
  例年通り3000ドルの支出を決めた.

8.その他
・合宿形式で行っていた計量セミナーを続けて欲しいとの意見があり,現理事の任期満了までに実現に向けて努力することとした.
・名簿に関して,選挙のためには必要であるのでプライバシーに配慮しつつ作成する.

9.次回対面理事会
  連合大会の際に対面理事会を開催する.

日本学術会議の報告

柳川 堯(久留米大バイオ統計センター)

成16年4月19日~21日に日本学術会議第142回総会が開催され, 「日本学術会議法の一部を改正する法律」が国会で承認され4月14日に公布されたという報告や, 公布された法律の概要について説明があり, 質疑応答や自由討論が行われました. 「一部を改正する法律」というもののその改正は抜本的・本質的です. すでに前2回の報告で改正の概要を紹介しましたが, 改めて法律の概要を紹介します.

1.  会員制度
  (1) 会員選考方法の変更
     個別の学協会の利害にとらわれない政策提言を行うことができるよう, 会員選考方法を登録学術研究団体を基礎と
     した推薦性から, 日本学術会議が会員候補者を選考する方法に変更(初回会員のみ日本学術会議会員候補者選考
     委員会による選考)
  (2)  定員制の導入・再任の禁止
     会員構成の硬直化・高齢会員の増加による組織活動の停滞を避けるため, 70歳定年制を導入, 任期を3年(3回まで
     再認可)から6年に延長する代わりに再任を禁止
  (3)  半数改選制の導入
     会議としての継続性の確保のため, 全会員の一斉改選から3年ごとの半数会員の改選に変更
2.    内部組織の改革
  (1)   部の大括り化
     新分野・融合分野の出現に柔軟・的確に対応できるよう, 現行の7部制を「人文科学, 生命科学, 理学および工学」の
     各分野を中心とする3部制に改組
  (2) 連携会員の新設
     緊急の課題や新たな課題を調査審議するなど, 会員と連携して日本学術会議の職務の一部を行う連携会員を新設
  (3) 幹事会の設置
     機動的な活動を確保し, 総会主義の弊害の排除のため, 現行の運営審議会を幹事会に改組し, 職務・権限の一部の
     委任を可能とする
  (4) 副会長の増員
     会長の補佐機能を強化し, 国際交流・協力に対応するため副会長1人を増員
3.  内閣府への移管
     内閣総理大臣の下, 総合科学技術会議と連携して我が国の科学技術の推進に寄与
4.  施行日
     平成17年10月1日(ただし, 初回会員の選考に係わる部分:平成16年4月14日, 内閣府への移管に係る部分:
     平成17年4月1日)
  日本学術会議統計学研究連絡委員会(以下, 統研連)からみた改正法律のポイントは以下のように思われます.
1. 統研連の廃止
    (1) 改正法の移行に係る措置:研連委員の任期を平成17年9月まで存続させる. その後は研連廃止, 連携会員を新設.
    (2) 研連廃止について:研究領域の再編成が行われるもよう. 経済統計研連との統合化, 数学研連との統合化, 情報
      学研連との統合化などいろんなパタンが考えられますが,研究領域の数をいくつにするかなどの入り口のところがまだ
      決まっていません.
2. 会員候補者の選考
    (1) 現行の統計関連6学会を基礎とする推薦から, 会員候補者選考委員会による選考に変更されます. このため新たな
       法律の下では, 新日本学術会議に統計学関連から会員が選出されない可能性があります. なお,会員数は従来ど
       おり210名です.
     (2)  3部制の改組に関して, 統計学は人文科学, 生命科学, 理学及び工学のいずれとも深く係っており, 全ての部に属す
       ると考えられます. にもかかわらず特定の部に所属すると股裂き分裂化が起こり,活力が失われる可能性があります
3. 連携会員の指名
    研究連絡委員会委員(約3000名)と同数の連携会員が, 選考委員会から指名されることになっていますが, 学協会から
    の推薦に基づいて指名されるのか, どのような手続きで指名されるのか現時点では不明です.

  以上, 法律で大枠は決まったものの細部の大部分はだ検討中で日本学術会議会長の説明と副会長の説明さえ食い違う
など, まだ落ち着く先が見えてきません. 私は, 研究者ひとりひとりが自分たちに密接に関係していると感じることができ,そ
の存在を誇りに感じられるような新日本学術会議であってほしいというスタンスを基本として発言するとともに, 統計学研究
領域から新日本学術会議会員が少なくとも1人は必ず出せるように尽力していますが,新米会員にとって力不足・発言力不
足でいかんともし難いところです. 皆様方のお知恵やお力添えをお願いいたします.

  平成16年度統計学関連学会が来る9月3日-7日まで岩手県花巻市の富士大学で開催されますが, その初日9月3
日15:15-17:15に統研連と連合大会共催でシンポジュウム「事例に見る統計科学の現代的価値」を開催します. 新日本学術
会議に向けて統計科学の重要性と価値をアッピールするのがひとつの目的です. 万難を排してご参加いただきますよう.
なお, プログラムは次のとおりです. 開催に当たって(竹村彰通), 新日本学術会議について(柳川 堯),金融機関における
統計科学の価値(安田裕司),統計科学における遺伝学の位置付け(鎌谷直之),情報社会における統計科学の役割(北
川源四郎).  以上

科学研究費基盤 A「医薬品の有効性・安全性の統計的評価法の新展開」 シンポジウム開催される

代表者:岩崎 学(成蹊大学)

2004年7月15日(木) 午後,成蹊大学4号館ホールにおいて,日本計量生物学会,科学研究費補助金基盤研究 (A) (1) 16200022共催,厚生労働科学研究費補助金「医薬品等医療技術リスク評価研究事業」協賛,日本製薬工業協会,くすりの適正使用協議会,成蹊大学後援の公開シンポジウムが開催され,下記のような講演が行われた.


挨 拶
    岩崎 学(成蹊大学・工学部)

医薬品の副作用自発報告によるシグナル検出の実用化に向けての課題
    藤田利治(国立保健医療科学院・疫学部)
    岩崎 学(成蹊大学・工学部)

製薬企業におけるシグナル検出の現状と問題点
    古閑 晃(日本イーライリリー株式会社・医薬情報部)
    小管美樹仁(日本イーライリリー株式会社・医薬情報部)

シグナル検出の方法論の最近の展開
     松下泰之(三共株式会社・医薬開発本部)
     渡邉裕之(万有製薬株式会社・臨床医薬研究所)
     医薬品医療機器総合機構・安全部


この他,当科研費研究班では,下記のような研究会を開催あるいは,今後も開催する予定です. 
無料で参加自由なので,参加ご希望の方は www.kakenbio.com からご登録ください.


・東京吉祥寺地区月例研究会
  第1回:
   日時:2004年6月28日(月)17:00 - 19:00
   会場:吉祥寺東急イン
   講演:松下泰之(三共・医薬開発本部)
   「ベイズ流の手法を用いた安全性シグナル検出」
  第2回:
   日時:2004年7月27日(火)17:00 - 19:00
   会場:吉祥寺東急イン
   講演:宮川雅巳(東京工業大・工)
   「統計的因果推論」

2004年8月は休み,9月以降毎月開催予定.


・シンポジウム(予定)
  日時:2004年12月中旬
  会場:東京都心(調整中)
  テーマ:統計的因果推論
  米国University of Pennsylvania のP. R. Rosenbaum教授を特別講演者に招き,実験研究および観察研究における
  因果推論およびその関連分野を広く討論.

編集後記

85号をお届けします.発行大変遅れて申し訳ありません.特に,学会賞の推薦期間(8月25日締め切り!)が短くなってしまっていること,科研費基盤研究Aシンポジウム前に発行できなかったこと,申し訳なく思います.  
余談ですが,計測自動制御学会学会誌「計測と制御」7月号がBiometrics特集で,計測技術による人間の識別特集でした.この技術を国際電気標準会議が,正式にBiometricsと呼ぶことを標準化したようで,商標登録されたような変な気持ちでした.計量生物学本家のGaltonこそ,指紋で人間識別を提唱した先達なので,回帰現象と思えばよいことかもしれません.

計量生物学会ニュースレター85号
2004年8月10日発行
発行者 日本計量生物学会
発行責任者 柳川 堯
編集者 椿 広計,山岡和枝