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会報 詳細

巻頭言

忌々しきPearson

   小生、最近遅ればせながらインターネットにはまっています。フリーの統計ソフトの Rのライブラリーの更新など新着雑誌よりも楽しみにしているところがあります。実際、インターネットで色々な一次資料を閲覧できるようになったのも、嬉しいことです。 Galtonの主要な著作や、Karl Pearsonが書いたGaltonの伝記なども全てインターネットで読むことができます。

   特に東北大学の図書館には、漱石の高弟である小宮豊隆が図書館長を勤めていたこと もあり、漱石自筆資料が多く収集され、閲覧可能で、小生これにはまったのです。この中に「文学論の序:草稿」というものがあり、「忌々しきPearson」という走り書きが出てきます。これが、Karl Pearsonのことでした。

   小宮氏の「文学論解説(漱石全集)」には、漱石がロンドン留学中1901年9月頃か ら、文藝を科学にする研究に没頭し始めたという記述がなされています。上記図書館 で調べると、1901年9月18日に、漱石はPearsonの「科学の文法第2版」を2ポンドで購入した書付が見つかります。漱石が所蔵していた「科学の文法」の表紙も図書館で眺 められるのですが、漱石全集には、この本に漱石が何を書き込んだか(すべて英文) というのが記録されていて、「自分は貴方より上手く文藝を科学にしてみせる」とか、「貴方の考えていたことは、自分がずっと考えてきたことだ」といった内容なのです。9月21日には妻の鏡子さんに「今、科学の本を読んでいる。自分が考えてきたことが書いてあって、悔しい。帰国したら、本を書くつもりだが、自分のことだからあてにならない」といった手紙も書いています。

   こうして帰国後に東大での講義をもとに出版されたのが、「凡そ文学的内容の形式は F+fなることを要す」で始まる「文学論」なのです。このFは、「認識的要素」、f は「情緒的要素」で、その均衡の上に、文藝は成り立つというものです。これは殆ど因子モデルのように見えます。第3編第1章「文学的Fと科学的Fとの比較一汎」の記述は、殆ど「科学の文法」の適用です。

   漱石のロンドン留学時代の大学ノートには、Data、Hypothesis、Probabilityといった用語が出てくる頁もあるのです。「Dataといえば、すべてsense impressionである」 とか「 Hypothetical lawは、その成立するprobabilityの程度に比例して価値がある」といった件です。 「文学から受けるPleasureは投入したエネルギーに比例す る」から始まる考察も、生産関数接近の先取りに見えます。Intelligence漱石の死後、当時の東大総長だけが、漱石の小説家転向を残念がり、彼の学問は世界的なものになったはずだというコメントを残しています。Galtonの提唱したStatistical Scienceに反応してK. Pearsonが、「統計科学の構築方法」を提起し、Pearsonは、 1890年代に奇跡とも言える生産性で計量生物学を構築したのです(ヒストグラム、標 準偏差、モーメント法、積率相関係数)。そして、漱石は、自分の生涯でこれほど集中したことはないと自負した狂気の中で、計量文学を作ろうとしたのです。

  Einstein(1940, Science, Vol. 91)の講演にも「科学の文法」の影響を指摘できる し、Fisherすら「科学の文法」は批判しなかったというのを読んだことがあります。 2002年にPearsonの「自由思想の倫理」がハワイ大学から復刻されましたが、最近 UCLA辺りのホームページでもPearsonはKnowledge Managementの祖で、「科学の文法」を講義に使うという先生もいるようです。わが国でも統計に限らずPearsonが復 権しないかなというのが、インターネット時代のにわかPearsonフアンの心情です。

 椿 広計(筑波大学ビジネス科学研究科

 

会長の一言

去る5月の総会で、会費の値上げをお認めいただきました。不況のまっただ中、お叱りを覚悟しての、 苦衷の提案でした。この2年間非常事態がつづきニュースレターをホームページに移行するなどできる限りの対策をとりましたが万事窮しました。 総会に出られなかった会員諸兄姉のご理解を頂ければ幸いです。

  さて、9月7~11日、明星大学で日本統計学会、応用統計学会との連合大会を開催致します。 すでにプログラムがお手元に届いていることと思いますが、日本計量生物学会は「計量生物学が統計科学に与えた大きな貢献」 という特別セッションを企画し気勢を上げます。多数の皆様方にご参加いただきますよう。

柳川 堯

理事会議事録

2002年度第1回理事会議事録

日 時:2002年3月29日18:00 - 21:00

場 所:新丸コンファレンススクエア ミーティングルーム01

出席者:柳川,岩崎,岸野,佐藤,柴田,椿(広),椿(美),吉村。

欠席者:安楽,上坂,大瀧,大橋,折笠,栗原,後藤,佐々木,丹後,丸山,三中,山岡(全員委任状提出)。

議 題

1. 前回議事録およびE-mail理事会議事録の確認

 若干の修正の上,議事録案通り承認された。

2. 計量生物セミナー報告集の発行

 過去に開催された計量生物セミナーのうちのセミナー記録未発行分については,「生物」,「臨床」とも,2002年5月末日までに集まった原稿を取りまとめ,学会誌の特別号として発行する。

3. 会計の整理

 2002年度をもってセミナー会計を廃止する。セミナー記録発行後に確定する余剰金のうち,2000年度発行の論文誌の印刷費相当分1,187,075円を一般会計に繰り入れ,残りを特別会計に移すこととした。なお,特別会計のセミナー会計からの累積借入金403,820円は帳消しとする。

4. 会費の改定

 会費に関する会則の規定を以下のように改める件を総会に諮る。現行の

「7.(1)会費として正会員は年額10,000円,学生会員は5,000円,賛助会員は一口10,000円以上を毎年1月末日までに納入しなければならない。ただし,国際計量生物学会からの機関誌Biometricsの送付を希望しない者の会費は,正会員・学生会員とも年額4,500円とする。」

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「7.(1)会費として正会員は年額6,000円,学生会員は4,500円,賛助会員は一口10,000円以上を毎年1月末日までに納入しなければならない。ただし,国際計量生物学会からの機関誌Biometricsの送付を希望する者の会費は,上記金額に国際計量生物学会への送金分を上乗せした額とする。」

とし,この会費改定は2003年度から実施する。なお,本部送金分の金額決定方式は別途定めることとする。

5. 2001年度活動報告,決算報告

 2001年度活動報告案および会計報告がなされ,会計監査が終了した旨が報告された。

6. 2002年度活動予定,予算案

 2002年度活動予定および予算案が示され,共に了承された。

7. 総会に提出する議案

 2002年度総会には,通常の活動報告,決算報告,活動予定,予算案に加え,計量生物セミナー記録の発行,会計の整理,2003年度からの会費の改定を議案として提出することを決めた。また,論文誌のon-line journal化の早期実現の可否も総会に諮ることとした。

8. 秋の連合大会への対応

 連合大会への一般講演の申し込み法およびプログラム編成作業について議論した。

9. その他

(1) 計測自動制御学会など12学会が推進している「横断型研究開発の推進」の取り組みが紹介され,引き続き検討することとした。

(2)「統計科学連合(案)の構想」が紹介され,計量生物学会としてのかかわり方は引き続き議論していくこととした。

(3) 5月のシンポジウムのプログラム案およびチュートリアルセミナー案内の案がほぼ原案通り了承された。

 庶務理事 岩崎 学

2002年度日本計量生物学会シンポジウムおよびチュートリアルセミナー報告

企画担当理事 岩崎 学

 昨年度までの計量生物セミナーを新しく衣替えした日本計量生物学会シンポジウムおよびチュートリアルセミナーが,2002年5月24日(金)にJR京都駅のすぐ南の京都府民総合交流プラザ「京都テルサ」にて開催された(後援:応用統計学会)。当日は,午前中に「メタ・アナリシス-エビデンスの統合をめざす統計手法」のチュートリアルセミナー,午後に「-医学・生物学的リスクの評価-」をテーマとするシンポジウムが行なわれた。

 午前中のチュートリアルセミナーは丹後俊郎講師によるもので,参加者は,正会員59名,非会員47名,学生9名の計115名であった。この人数は企画者(および講師)の当初の予想を大きく上回るもので,メタ・アナリシスに対する関心の高さを表わしていた。セミナーは丹後氏の最新の著書に沿い(会場に用意したテキスト70部も完売),問題の背景から最近話題のブリッジングまで幅広い話題について触れられた。一人で2時間半に渡るセミナーを担当された丹後氏に感謝する。

 午後のシンポジウムでは,協和発酵工業の長嶋實氏による「環境リスク・コミュニケーション」および九州大学医療技術短期大学部の長山淳哉氏による「ダイオキシンと環境ホルモン:胎児と乳児への影響」の2題の特別講演および8題の一般講演が行なわれた。参加人数は,正会員80名,後援学会員12名,非会員46名,学生6名の計144名で,こちらも当初の予想を大きく上回る参加人数で,会場が狭く感じられた。長嶋,長山両氏の特別講演は最近の環境問題を取り上げたもので,いささかショッキングな内容も含み,参加者の皆さんに大きなインパクトを与えたものであった。一般講演も,方法論や実際例など多彩な内容のいずれも興味深いものであった。

 第1回目のシンポジウムならびにチュートリアルセミナーということで企画段階ではいささか心配した部分もあったが,天候と地の利に恵まれ,何にも増して魅力的な講演が多かったことから,大成功であったと総括できよう。最後ではありますが,会場の設営および当日の進行にご尽力された京都大学の佐藤俊哉教授を始めとする京都大学の皆さんに深く感謝します

2002年度日本計量生物学会総会報告

日 時:2002年5月24日(金)17:30 - 18:30
場 所:京都府民総合交流プラザ「京都テルサ」

  総会開会に先立ち,出席者数が書面での委任状(82通)を含め総会の定足数(会員数376名の1/5 = 76名以上)を満たし,総会が成立していることが確認され,柳川会長を議長として以下の議事が進行した。議案は,
  1. 2001年度活動報告,決算報告
  2. 2002年度活動予定,予算案
  3. 計量生物セミナーの発行
  4. 2003年度よりの会計の整理
  5. 2003年度よりの会費の改定とそれに伴う会則の変更
  6. 近い将来の論文誌の On-line journal 化の是非に関する意見聴取
  7. その他
であったが,これらのうち重要議案である3,4,5については総会案内送付の際に説明文を付し,会員諸氏に情報提供すると共に広く意見を募った。以下に議事進行の詳細を報告する。

議 案:
1. 2001年度活動報告,決算報告
  岩崎庶務理事より以下の活動報告がなされた。
(1) 新役員の構成
  2000年に実施された役員選挙の結果を踏まえ,以下の各理事により2001/2002年度の会務を遂行することとした。
会長:柳川 堯
庶務:丸山祐造
会計:椿美智子,佐々木秀雄
学会誌編集:佐藤俊哉,三中信宏
ホームページ担当:山岡和枝,折笠秀樹
企画 年会:大橋靖雄,吉村 功
セミナー(臨床):岩崎 学,上坂浩之,栗原律子,椿 広計
セミナー(生物):岸野洋久
組織:柴田義貞,丹後俊郎
国際:安楽和夫,後藤昌司,三中信宏
学術会議:大瀧 慈
なお,年度途中で庶務担当を丸山理事から岩崎理事に交代した。

(2) 年次大会,総会
  2001年度年次大会を応用統計学会と合同で2001年4月5日,6日の両日,総評会館(東京都千代田区神田)にて開催した。参加者は278名(両学会正会員183名,非会員75名,学生20名)で,特別講演として「ニューラルネットの推定理論-モデルの対称性と識別不能性-」,「探索的層別分析の光と陰」の2テーマ,特別セッションとして「欠測値や外れ値を含むデータの統計解析」を取り上げた。一般講演は22件であった。年次大会の会期中総会が開催され,2000年度の活動報告と会計報告,ならびに2001年度の活動予定と予算案が承認された。

(3) 計量生物セミナー
  第9回計量生物セミナーが2001年10月12日(金),13日(土)の両日,静岡県裾野市の帝人富士教育研修所において開催された。テーマは,「臨床」が『医薬品開発における薬物動態および薬力学の特徴づけと民族間の類似性』,「生物」が『Bioinformatics: ゲノム情報による遺伝子の探索,機能予測,集団構造と進化の推定』で,参加人数は「臨床」が会員38名,非会員40名の計78名,「生物」が会員9名,非会員5名,学生6名の計20名,合わせて98名であった。

(4) 学会誌の発行
  「計量生物学」第21巻2号 (2000) を2001年7月に発行した。論文は,原著3報,研究速報2報で全74ページであった。

(5) ニュースレターの発行
  前年度理事会でニュースレターの電子配信が決定され,2001年度は暫定措置として
1) ニュースレターはホームページに掲載し,電子メールで会員にニュースレターが掲載されたこととその目次を配信する,
2) 電子メールで配信できない会員にはプリントアウトしたものを郵送する,
の方式により No. 74 (2001. 1),No. 75 (2001. 4),No. 76 (2001. 7),No. 77 (2001. 10) の4回発行し,種々の情報を会員に提供した。

(6) 理事会
  対面理事会を2月3日,4月5日,10月16日の3回開催し,会務の遂行上の種々の案件について議論した。また,必要に応じE-mail理事会により意見交換をした。

(7) その他
(i) 2001年8月30日~9月1日,福岡ソフトリサーチパークにて開催の「環境と健康:統計科学からの挑戦」国際会議を主催した。
(ii) 2001年度から新たに雑誌「計量生物学」に広告を掲載することとし,掲載料は1ページあたり30,000円とした。
(iii) 「計量生物学」の論文掲載料を著者にお支払いいただくことが2001年度第1回理事会および2001年度総会で決定し,実行に移した。掲載料は刷り上り1ページ2,000円,別刷りは50部まで無料で進呈しそれ以上は1部100円とした。ただし,ページ数が多いあるいは写真が使われているなど特別なものについては実費相当額とした。
(iv) 長期会費未払い者に繰り返し督促を行い、消息不明無反応者7名を退会扱いとした。

  次に, 2001年度決算報告(本総会報告の最後に添付)が佐々木会計理事よりなされ,柳本武美監事から適正な会計であるとの会計監査報告が行なわれた。活動報告および決算報告は共に拍手により承認された。

2. 2002年度活動予定,予算案
  岩崎庶務理事より以下の2002年度活動予定が示された。
(1) 年次大会
  2002年度年次大会を,日本統計学会,応用統計学会と合同で2002年9月7日から9月10日にかけて明星大学(東京都日野市)にて開催する(9月7日はチュートリアルセミナー)。大会プログラムに関しては,上記2学会を含めた3学会で調整する。

(2) 計量生物シンポジウム,チュートリアルセミナーおよび総会
  年次大会が上記のように9月に開催されることから,例年秋に開催していた計量生物セミナーを今年は開催せず,代わりに日本計量生物学会シンポジウムを5月24日の午後に京都テルサで開催する。また,同日午前にチュートリアルセミナーを同所にて開催する。さらに,総会をシンポジウム時に同所にて開催する。

(3) 学会誌の発行
  「計量生物学」第22巻1・2合併号 (2001) ならびに第23巻を発行する。さらに,過年度開催の計量生物セミナーの記録からなる特別号を発行する。

(4) ニュースレターの発行
  ニュースレターの電子配信への暫定措置が前年度で終了し,今年度からすべて電子配信によるニュースレターを年4回(No. 78, 79, 80, 81)発行する。

(5) 理事会
  理事会(対面理事会,E-mail理事会)を適宜開催し,会務遂行上の諸点を議論する。

(6) 会費未納入者の扱い
  5月中旬までに会費の納入のない会員については雑誌の送付などのサービスを一時停止し,会費納入後に再開する。この規定は国際計量生物学会の決定に準じるものである。

(7) その他
(i) 計量生物学の発展に資する学会,シンポジウムなどを適宜後援する。
(ii) 2003/2004年度の新役員の選挙を行なう。

  次に佐々木会計理事より以下の2002年度予算案(本総会報告の最後に添付)が示され,活動予定および予算案が議案どおり拍手で承認された。

3. 計量生物セミナーの発行
  岩崎庶務理事より,過年度開催の計量生物セミナーのうち報告集未発行分を「生物」,「臨床」とも2002年5月末日までに集まった原稿を取りまとめ学会誌の特別号として発行する案が提出され,拍手で承認された。

4. 2003年度よりの会計の整理
  岩崎庶務理事から以下の説明があった。
  一般会計,特別会計,セミナー会計の3種類の会計のうちセミナー会計を廃止して前項3の過年度計量生物セミナーの記録発行後の残金を特別会計に移動する。その際,一般会計で支払った2000年度発行の論文誌の印刷費相当分1,187,075円は,計量生物セミナー開催の本来の趣旨(途上国援助,学会の特別な催し・新興事業への援助)を考慮し,2000年度に学会誌の質の向上を図ったのは学会設立20周年での特別事業にあたることから,この分はセミナー会計から負担する。なお,この会計整理に伴いセミナー会計から特別会計への累積借入金403,820円は帳消しとする。
  以上の提案に関し,若干の質疑応答の結果,拍手で承認された.

5.2003年度よりの会費の改定とそれに伴う会則の変更
  岩崎庶務理事より会費の改定ならびに会則の変更に関して以下の提案がなされた.
  国内の学会活動費の正会員分を現在の4,500円から6,000円に値上げし,IBS本部への送金分はそれに上乗せする.なお,本部送金分の具体的な金額へ別途これを定める.それに伴い,会則の会費規定の部分を以下のように変更する.
(旧)「7.(1)会費として正会員は年額10,000円,学生会員は5,000円,賛助会員は一口10,000円以上を毎年1月末日までに納入しなければならない。ただし,国際計量生物学会からの機関誌Biometricsの送付を希望しない者の会費は,正会員・学生会員とも年額4,500円とする。」
(新)「7.(1)会費として正会員は年額6,000円,学生会員は4,500円,賛助会員は一口10,000円以上を毎年1月末日までに納入しなければならない。ただし,国際計量生物学会からの機関誌Biometricsの送付を希望する者の会費は,上記金額に国際計量生物学会への送金分を上乗せした額とする。」
  以上の提案に対し,会員からの書面による質問への回答ならびに会場の参加者との質疑応答の末,日本計量生物学会会則第21条の (1)「本会則の改正には総会において出席者の3分の2以上の議決を経なければならない。」に則り,(委任状を含む)出席者の3分の2以上の賛成を得て議案が可決された.

6.近い将来の論文誌の On-line journal 化の是非に関する意見聴取
  論文誌の on-line journal 化の是非について会員の意見を聴いた.その結果,実現についてはさらに議論する問題があるので,今後も引き続き検討を重ねていくこととした.

○ 別添資料:2001年度決算報告ならびに2002年度予算案 PDF

日本計量生物学会シンポジウム座長報告

独立行政法人・農業環境技術研究所 三中信宏

一般講演I

このセッションでは,生物統計学のいくつかのテーマについて研究発表がなされた.緒方裕光「低線量放射線の生物学的リスクに関する

統計学的考察」では,放射線リスク評価における未解決問題のひとつである低線量放射線のリスクをどのようにしてモデル化するのかが論じられた.

 梶谷泰秀・岸野洋久「最尤法を用いたPhylogeneticprofileの分析」では,遺伝子共有に関するデータ(プロファイル)を最尤法の枠組みで分析する方法について発表があった.

続く,吹田正治・岸野洋久「俯瞰前データを用いた父性解析による遺伝拡散距離の最尤推定」では,保全遺伝学で問題となる遺伝子拡散距離を雌雄ペアに関する不完全データのもとで最尤推定するための方法が論じられた.

最後の,大森宏他「仮想花壇作成による花卉の嗜好解析」では,花卉植物の国内外における嗜好パターンをバーチャル空間における仮想花壇として視覚化する方法が論じられた.

 

特別講演Ⅰ 座長報告

筑波大学大学院経営システム科学専攻  椿 広計

 

講演者は、企業で長年環境安全対応の責任者として尽力し、日本化学学会で環境リスクコミュニケーションに関する報告のとりまとめにも当たった。これらの幅広い経験から、環境リスク全般に対して、現在どのような認識が一般になされているのか、どのような問題が大きな問題なのか、リスクの伝達に関するマスコミのあり方はどうなのかという点について、大局的に語って頂いた。本来、質の高いデータの収集に基づいて冷静な議論をしなければならない分野が多々あるのに、現実は必ずしもそうなっていない。そこに計量生物学会の果たすべき役割があるのではないかという、講演者の問いかけには何らかの形で応える必要があろう。なお、講演後の質問としては、環境リスクと副作用リスクを対比させつつ原因追求に関する系統的な方法論はあるのかというものがあった。大変興味深い議論だが、環境リスクは、講演にもあった遺伝子組み換え食品のように結果(影響)に対する不確実性も大きいといった特異性もあるのだとろうと推察した。また、環境リスクコミュニケーション自体の系統的な方法論についても質問があったが、これも今後の課題と考えられる。


特別講演II 座長報告

報告者:山本英二(岡山理科大学)

長山淳哉(九州大学医療技術短期大学部) 

「ダイオキシンと環境ホルモン:胎児と乳児への影響」

環境汚染物質の非常に微量な暴露による発生毒性について講演がなされた.ダイオキシン類を代表とする化学物質が,ホルモン様作用により内分泌機構をかく乱し,特に受精卵から胎児に至る発達途上で害作用を及ぼすとの研究についてである.ホルモン様作用ということから,非常に微量な量のリスク評価となる.我が国の母乳汚染レベルはPCBや農薬は数ng/gレベルであるが,ダイオキシン類はその1000分の1の1pg/gレベルである.しかし乳児がPCBや農薬では摂取許容基準を満たしているのに比べ,ダイオキシン類ではホルモン様作用のリスク評価から最近低減された摂取許容基準4pg/kg体重/日をも30倍ほども大幅に超過している.このことは,PCBや農薬でもホルモン様作用のリスク評価を行えば許容基準は低減されると考えられる.実際,乳児の観察研究によれば,いくつかの農薬による甲状腺ホルモン系,脳・神経系への影響が見られた.先天性甲状腺機能低下症の増加(日本)や母乳PCB汚染と児童IQ低下(米国),母乳哺育とアトピー性疾患の関連(日本)等のホルモン様作用と見られる影響の研究が蓄積されてきた.この分野のリスク評価が進み,リスク管理がなされなければならないとの趣旨であった.

 

一般講演Ⅱ 座長報告

 群馬大学医学部保健学科医療基礎学  林 邦彦

一般演題Ⅱでは、臨床試験や疫学研究に関連した統計学的課題について4つの講演があった。まず、西次男氏から演題「平均値の治療群間バランスをとる割付」の発表があった。二重盲検群間比較試験における治療法の割付において、群間で予後要因のバランスをとるため最小化法などの逐次的割付が行われることが多い。この逐次割付において、各群の対象数の差、連続変数では平均値と標準偏差での差、分類変数では各分類における期待対象者数との差に重みを付け、重み付き和が最小となる治療群に、新規対象者を割り付ける方法が提案された。この方法によれば、連続変数である予後要因を考慮する割付が可能となる。シミュレーションによる重み付けの評価の報告もなされ、会場からはシミュレーションでの検出力や順序への拡張などの点について質疑があった。

次に、小川幸男氏から「欠測が中間変数に依存する場合のmultiple imputationによる解析と欠測のある対象者を除いた解析のシミュレーションによる比較」の発表があった。肥満→高血圧→心疾患という因果連鎖に中間変数がある場合を想定したシミュレーションが行われた。欠測の補填モデルに中間変数を組み込んだmultiple imputation による推定は、偏りやconverge probabilityなどの点から有用であることが報告された。また、嘉田晃子氏は、「中止・脱落の理由を考慮したIPCW法による臨床試験データの解析」の演題を報告した。経時観察データで問題となる観察打ち切りに対して、Missing at Randomな打ち切りの仮定のもと、打ち切り確率をモデル化するIPCW法を、中止・脱落の理由で分類して用いる提案がなされた。臨床試験では、より現実に起こりえる状況でのIPCW法の応用であり、また理由により分類することで中止・脱落による打ち切りが治療効果推定に及ぼす影響を検討できるという利点が報告された。

最後に、千葉康敬氏から「等分散が仮定できない測定誤差モデルにおける推定法のシミュレーションによる検討」の講演があった。説明変数、目的変数ともに測定誤差があり、かつ両誤差に等分散が仮定できない場合の回帰分析での推定方程式について報告がなされた。報告された推定方程式は、河鍋が提案した推定関数の不等分散型への拡張であるが、シミュレーションの結果、等分散を仮定した推定法にくらべ希薄化を改善することが示唆された。会場からは、解析例として用いられたデータセットに関する質問、また提示された推定関数にモーメントが無い点や、不等分散への拡張について推定関数の提案者河鍋の意見について質疑が行われた。

日本学術会議報告 2002年7月20日

統計学研究連絡委員会 委員長 吉村 功

4月16~19日にかけて,総会が開かれました.主要議題は,「日本の計画」の案文作成,日本学術会議の自己改革,自己評価でした.議論でのやりとりのある種の面白さを別とすれば,統計学関連研究者の方々に報告したくなることはありませんでした.

学術会議に限らないことでちょっと気になったことがあります.自己評価と外部評価の必要性が強調される中で,研究・教育といった本質的なことと別な,事務的な仕事が増えていくことです.たとえば,「研究連絡委員会の自己評価を送ること」という指示があり,後に添える内容の評価書を送らざるを得ませんでした.

これらは委員会の反省材料になりますし,これを公表することでどんなことをしているかが外部から分かります.しかしその内容がそのために費やされる時間と労力に見合うものかどうかを考えると,学術会議などではこんなことをさせないで欲しい,と感じます.いかがでしょうか.

 

●日本学術会議の自己評価

平成14年7月15日

様式2 研究連絡委員会、専門委員会、小委員会

1. 委員会: 統計学研究連絡委員会

2. 構成委員数: 会員 7名,非会員7名(内訳)所属:教育・研究専門機関7名(男6、女1)

3. 評価代表者名: 吉村 功

4. 委員会今期活動目標: 1.統計学関連学会の協調を強めること、2.統計科学のフロンティアの拡大、3.統計学教育の進め方の検討。

5. 活動目標を選択した理由について,自由にお書き下さい。: 1について:それぞれの歴史的経緯があって作られた統計学関連学会において,近年,医学薬学生物学関連の方法論の構築と応用,官庁統計データの活用,社会科学への統計的方法論の活用,大規模環境データの解析,コンピュータ利用手法など,共通の問題意識のものが多くなっている。そこで学術大会の共同開催,英文学会誌の共通発行,国際連携等で協調を進めることが望ましくなっている。2.上に例示した共通課題は現在社会が解決を強く求めている課題でもある。そのような課題は統計学のフロンティアを拡大することではじめて解決への道筋が作られるものである。3.課題が多くあるときにはそれに取り組む人材も多く必要で,それを養成することが必要である。

6。 目標の達成方法について,ご自由にお書き下さい。: 最初に委員における討論を行った後,関連学会の責任者(会長等)をオブザーバーとして招き,可能性の検討を行った。さらに,委員のそれぞれの学会での立場に基いて,いくつかの学会間での部分的な協調を進展させるよう働きかけている。

7. 委員会開催回数: 5回。ただし、この会合は、全体の対面委員会であり、この間には、メイルによる意見交換と委員長・幹事の会合が開かれている。

8. 委員会出席者数(オブザーバー,傍聴者は外数): 第1回  11人(オブザーバー 0人)第2回  9人(オブザーバー 0人)第3回  9人(オブザーバー 0人)第4回  8人(オブザーバー 5人)第5回  9人(オブザーバー 3人)

9. 活動の成果: 日本統計学会,日本行動計量生物学会,応用統計学会,日本計量生物学会,日本計算機統計学会,日本分類学会,日本数学会統計数学分科会の学会誌,機関誌等に,日本学術会議での議論を報告した。これらの組織に対して,協調のための企画,たとえば「日本統計科学連合設立趣意書案」等を送り,検討の基盤を用意している。

10. 学・協会との連携: 上記各学会といろいろな機会に検討を行っている。

11. 活動の公開状況: 日本学術会議報告を総会の度ごとに各学会に送っている。これらは,各学会の機関誌上に掲載されている。

12. 目標の達成状況: 統計学研連の表だった企画というわけではないが,平成14年度には,日本統計学会,応用統計学会,日本計量生物学会の3学会で,年次大会を合同して行うことが実現した。さらに,平成15年度には,日本行動計量学会を含めた4学会の連合大会の試みが検討されている。

13. 目標達成の阻害要因について,ご自由にお書き下さい。: 統計科学のフロンティアの拡大について,個別の研究としては部分的な発展があるが,統計学研究連絡委員会という形式での企画を組むことには,関連学会の同意が得られていない。統計学教育の方法論については,理数教育一般での困難と同様,学生等の生活経験が乏しくなっていることが大きな原因になっているため,特段の工夫が試みられない状況である。

14. 成果の評価: まだ成果を議論する段階に至っていない。

15. 評価結果に基づく改善案: 今後とも課題の達成に努力したい。

16. 所属組織による評価について,ご自由にお書き下さい。: 所属組織が何を意味するか不明である。もし,統計学研連を意味するのであれば,期末の委員会で検討する予定である。

学会事務局からのお願い

学会事務の円滑化のため以下のお願いをします。会員諸氏のご協力をよろしくお願い申し上げます。

1.2002会計年度 (2002.1.1 - 2002.12.31) の会費納入のご連絡を近々致しますので早めの対応をお願いします。その際、発展途上国援助のご寄付にもご協力下さい。なお、会費納入期限 (2002.3.15) までに会費の納入がありませんとBiometricsなどの送付が停止されますのでご注意下さい。

  2.異動がございましたら学会事務局まで必ずご一報下さい。なお、国際会員(Biometricsを購読するB会員) の方の異動のIBS本部への連絡は日本の学会事務局を通じて行ないますので、新異動先の英文表記も合わせてご連絡下さい。

  3.2001年にBiometricsが届いていないなどの事故がございましたら、学会事務局までお知らせ下さい

広告掲載のお知らせとお願い

学会誌への広告掲載のお願い

   「計量生物学」は年2回発行している学会誌ですが、広告掲載を募集しております。内容としましては、統計学関連の書籍・雑誌、統計ソフト、会議案内、人材募集などです。掲載料は1回につき、B51頁で3万円、半頁で1.5万円です。流通部数は約500部です。なお、本件に関する問い合わせは折笠秀樹(メール:horigasa@ms.toyama-mpu.ac.jp)までご連絡願います

事務局からのお知らせ

●お願い

 関連学会、会議、セミナーなどございましたら、ニュースレター編集担当委員までお知らせ下さい。また、生物統計学の発展に資するもの、会員に有益であると考えられるものなどについての原稿等のご投稿をお待ちしております。原稿の送付先は以下の通りです。編集作業の都合上、できましたらEメールでお送りいただけますと幸いです。

広報担当理事 山岡和枝、折笠秀樹

原稿の送付先:

〒173-8605東京都板橋区加賀2-11-1

帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教室

山岡和枝

TEL:03-3964-1211(内線2178)

FAX:03-3964-1058

Mail to: kazue@med.teikyo-u.ac.jp