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会報 詳細【ニュースレターNo.76】 - 一般社団法人 日本計量生物学会

会報 詳細

ニュースレターに関するお知らせとお願い
前回のニュースレターですでにお知らせいたしましたように、本学会では、学会誌の質の向上に伴い 財政の見直しをする必要が生じて参りました。これについて前理事会ではニュース・レターの電子メール配信により郵送費削減を 図ろうという結論に達し、会員の皆様にご協力をお願いすることに致し、新理事会でもその方針が確認されました。

現在、暫定措置として

1)ニュース・レターはホームページに掲載し、電子メールでは会員にニュースレターが掲載されたこととその目次を配信する、

2)電子メールで配信できない会員にはプリントアウトしたものを郵送する、という方式を1年間(2001年12月まで)

つきましては、可能な限りメールアドレスをお知らせ下さい。また、メールアドレスの変更がございましたら、 メールにてお知らせ下さい。なお、理事会議事要旨、総会報告等は学会誌巻末にも掲載します。

事務局のEメールアドレス:

biometrics@sinfonica.or.jp

皆様のご協力をお願い申し上げます。

日本計量生物学会会長  柳川 堯

巻頭言

ゲノムサイエンスの片隅を垣間見る

10年前を振りかえると隔世の感がある。1989年暮れから1年弱、ワシントン大学遺伝学科 Joseph Felsenstein教授の部屋で研究をする機会を得た。最尤法における分子系統樹推定を説 いた1981年の論文は、当時としてもすでに古典として不動の座を得ていた。だが、最尤法は 数種の配列を解析する場合しか現実的な時間内に答えを出すことができず、有効性は理解できるがしかし、という冷 ややかなムードが系統分類学や進化生物学者の空間を満たしていた。おりしも統計学科では MCMCの収束性が盛んに研究され始めていた。ヒトゲノムプロジェクトが大々的に立ち上がっ たのもちょうどこの時であるが、生物学における巨大プロジェクトの到達点が、気の遠くなる ほどかなたのものに思えた。

 現在ゲノム解読の全工程が自動化され、日々良質なデータが大量生産されている。また世界 の研究者が個別に解析したさまざまな配列が、公開データベースに格納される。データの共有により、生命現象の理解はいよいよ加速している。各国が国家プロジェクトで取り組んだ成果 は数年を経ずして現れ、90年代半ばからは種々の原核生物においてゲノムデータが出始め、続 いて菌類、原生動物、線虫類、高等植物、昆虫、ヒトなどが次々に解読されつつある。並列的 に相同性検索を行うことにより、遺伝子の共有関係がわかる。これに基づき、生物の進化系統 樹を総合的に再構成し、進化の履歴の相関関係から遺伝子の機能の関連性を推測するなど、新 たな切り口が生み出された。

 時同じくして90年代半ばから、生命現象と生物進化の琴線に触れる結果を抉り出すベイズ 型階層モデルが、堰を切って怒涛のごとく排出されてきた。遺伝子の系統関係の背後にある構 造をモデル化することにより、数々の重要なテーマに対して、直接的な解答を与えることがで きるようになったのである。機能の多様化とともに速度がどのように変動するか、ゲノムや遺 伝子の特定の部位、あるいは特定の系統で積極的にアミノ酸を変えるような強い選択圧がかか っていないか、寄生虫の宿主スイッチは過去ランダムに起きているか、ウイルスの宿主適応の プロセスはどのようになっているか、といった問題が超パラメータを用いて記述される。集団 内の遺伝子の系図を利用して集団が膨張して来た歴史を推定し、系図の相関関係から重要な形 質を決定する遺伝子をゲノム上にマップすることができるようになった。文献データベースの 一次解析を事前分布として用い、マイクロアレイやゲノムデータの解析を行う、といった芽も 急速に伸びてきている。

 こう見ると、冒頭に述べたように10年一昔である。計算機環境の様変わりと数値計算法の 整備に支えられ、データの情報量が質的に変わるに伴い、解析の方法論は新機軸を迎えてきた。 これまで以上にこれら3者は変貌を遂げて行くであろう。それを待ち受ける新たな視角と解析 手法を、多くの人が模索しているのであろう。

           
岸野洋久(東京大学農学生命科学研究科)

会長の一言

本会が主催する始めての国際会議「環境と健康:統計科学からの挑戦」(8月30日-9月1 日、於福岡ソフトリサーチパーク)が近づいてきました。日本計量生物学会の力量を世界に問う大きなイベントです。会員の皆様方の絶大なご協力とご参加をお願い致します。

 さて、来年度の年会の件ですが、応用統計学会、日本統計学会等との連合大会として9月7 日から11日まで明星大学で開催することに決定しました。これに伴って、これまで秋に開催し ていたシンポジュームを春に移行します。また、その形態も問われています。21世紀を迎えて 本学会は、日本におけるバイオメトリックス研究活動の一層の活性化と組織化を目標に掲げ、 大きな変革に乗り出しています。会員の皆様から活発なご意見を頂ければ幸いです。

柳川 堯

○<応用統計学会・日本計量生物学会2001年度合同年次大会報告> 

今年度の合同年次大会は,2001年4月5日,6日の両日,総評会館(東京都千代田区神田)にて開催されました.参加者は278名(両学会正会員183名,非会員75名,学生20名)でした.特別講演として「ニューラルネットの推定理論 --モデルの対称性と識別不能性 --」,「探索的層別分析の光と陰」の2テーマ,また特別セッションとして「欠測値や外れ値を含むデータの統計解析」が取り上げられました.一般講演の申込みは20件でした.今回の合同年次大会開催におきましても,大野満夫氏(サイエンティスト社)をはじめ関係者の方々に,会場の準備や当日の運営において大変お世話になりました.厚くお礼申し上げます.

  各セッションの概要を,座長にお願いしてまとめていただきましたので,以下に掲載します.
また,予稿集に多少の残部がありますので,希望される方は事務局までお申し込みください.

(プログラム編成作業委員長 三輪哲久)


一般講演 I

○安道知寛(九州大学大学院)・井元清哉(東京大学)・小西貞則(九州大学大学院)
「動径基底関数ネットワークに基づく非線形判別」

  動径基底関数ネットワークを識別・判別問題に適用するにあたっては,基底関数をどのように構成するかが問題となる.この講演は,基底関数の広がりの程度を調節するためのハイパーパラメータを導入した非線形判別モデルが提案され,正則化法を用いて推定を行なう方法が提案された.また,モデルの構築にあたっては,情報量規準に基づくモデル評価規準が導出された.実データを用いた数値比較においては,提案する方法が他の手法に比べて,誤判別率が小さいことが報告された.講演後,モデルの構成法や妥当性について,質問,コメントがあった.

○浅野晃(広島大学)・藤原真(広島大学)・村木千恵(岡山理科大学)・大瀧慈(広島大学)
「ロジスティック判別関数を使った画像中の物体同定」

  2つの画像の組が,同じカテゴリに属するのか,違うカテゴリに属するのかを判別する問題に対し,この講演では,ロジスティック関数を用いた判別方式が提案された.実データを用いた実験では,抽出されたいくつかの画像の特徴量を,それらを個別に用いた場合,組み合わせた場合のそれぞれについて,誤判別率の比較が行なわれた.また,タイプ1,タイプ2のそれぞれの誤判別率に制限を加えた場合の判別能力に関する実験も行なわれた.講演後,主成分分析やクラスタリングなどの標準的な手法との関連,比較についての質問,コメントがあった.

○竹村彰道(東京大学大学院)
「多重分割表の線形交互作用モデリングによる母集団一意数の推定」

  個票データの開示問題では,開示リスクの尺度として母集団一意数が用いられることが多い.この講演では,個票データを多重分割表とみなし,多重分割表のセル確率の評価に基づく母集団一意数の推定方法が提案された.その際,セル確率のモデルとしては,推定および解釈の容易さを配慮して,Lancaster 型の加法モデルが用いられた.実データの解析においては,10元の分割表データに対し,提案するモデルによる推定が Ewens モデル,Pitman モデルによる推定と比較された.講演後,加法モデル,乗法モデルのそれぞれの長所,短所に関する質問,コメントがあった.

○二宮嘉行(総合研究大学院大学)
「確率場の変化点問題に対するチューブ法の適用」

  正規分布に従う二次元確率場において,変化点の有無を検定する問題に対して,尤度比検定統計量の帰無仮説の下での分布は,独立でない複数個の統計量の最大値の分布となることが知られている.その裾確率の計算には様々な手法が提案されているが,確率場が大きくなると計算が困難となる.この講演では,チューブ法を用いた近似によって,裾確率を保守的に評価する方法が提案された.また,数値実験によって,提案する方法が各種の Bonferroni 法よりも有効であることが示された.

座長: 青木敏(東京大学大学院)

特別講演 I

○福水健次(統計数理研究所)
「ニューラルネットの推定理論 -- モデルの対称性と識別不能性 --」

  多層ニューラルネットにおける統計推測問題に関して,発表者の最近の2つの仕事の紹介を中心とする報告がなされた.

 一般に多層ニューラルネットにおける経験損失関数 (あるいは尤度) は多くの臨界点 (局所的な極小点,鞍点など) を持つことが経験的に知られている.本発表の前半では,多層ニューラルネットなどのある種の対称性を持つモデルは構造上必然的に臨界点を持つことが報告された.また併せて臨界点が極小値となるための条件が与えられた.

 後半ではモデルの対称性に由来する識別不能性に関する発表がなされた.最初に特異点を含むモデル,すなわち特定の点で情報行列が縮退するようなモデルを扱うための局所錐構造の定式化が導入された.その特異点を帰無仮説とする仮説検定の尤度比統計量の帰無分布は一般には複雑な挙動を示す.本報告では漸近帰無分布が確率的に発散するための条件が与えられた.またその結果を用いて,3層パ-セプトロンにおける尤度比検定の漸近帰無分布の発散オ-ダの下界が示された.

 本報告で論じられている非正則構造はニュ-ラルネットに限らない多くの統計モデルにおいてもしばしば観察される構造であり,この分野の今後の発展が期待される.

座長: 栗木哲 (統計数理研究所) 

一般講演 II

○山岸耕一(新潟大学),祝前博明(新潟大学),蘆田一郎(新潟大学)
「牛枝肉形質に関する分散成分の縮約個体モデル --
擬似期待値法に基づく一推定手法」

○蘆田一郎(新潟大学),祝前博明(新潟大学)
「多形質個体モデルにおける(共)分散成分のAitken加速技法を利用したEM-REML推定」}

  この2講演は,ともに家畜の遺伝的能力(育種価)の評価において必要となる分散成分の推定法に関するものである.和牛における種雄牛のように一頭当たりの経済価値の高い家畜においては,個体の育種価を高い精度で予測することが極めて重要であり,その過程で分散成分の推定が不可欠である.和牛においては,全国の関係機関から得られる標本数が膨大であり,形質の測定値に当てはめる混合線形モデルの分散成分を推定するために,次元の大きな行列を扱った反復計算が必要となる.分散成分の推定法としては,制限付き最尤法(REML法)が通常用いられるが,収束時間をいかに短縮できるかが実際の推定では問題となる.山岸氏らは,REML法の代用として疑似期待値法(SPE法)の利用について検討を加えた.各個体の育種価を考慮した個体モデルでは,SPE法が適用できないが,後代をもつ個体の育種価のみを考慮した縮約個体モデルでは,SPE法の適用が可能であることを示し,シミュレーションを用いて縮約個体モデルにおけるSPE法の評価を行った.その結果,推定値の収束に関してSPE法はREML法に比べてはるかに速かった.しかし,SPE法の推定値は,REML法の推定値から多少の偏りがみられた.SPE法の推定値の偏りは,データセットごとに異なり,個体間の血縁関係などのデータ構造に依存するように思われた.SPE法の偏りとデータ構造との関係についての質問があったが,シミュレーションで用いたデータセットの数が少なく,確定的なことは不明との回答であった.少なくとも,SPE法の推定値はREML法における推定値の初期値としては有用であろう.

 体重や脂肪厚など複数の形質の間には相関があり,それらの形質を個別に解析するよりも,多形質の同時解析が望ましい.しかし,REML法を用いた多形質の同時解析による分散,共分散の推定では,推定値の収束時間が非常に長くなってしまう.蘆田氏らは,Aitken加速技法を利用して,多形質のREML法による収束時間の低減を試みた.多形質データを正準変換して得られるデータに対して,混合線形モデルを当てはめREML法により分散成分の推定を行い,Aitken加速技法を用いて収束の加速を図った.
5形質における実データの分析を実例として与え,同時解析に供する形質の数が2,または3のときには,Aitken加速技法により収束までの反復回数が減少することを示した.しかし,5形質の同時解析では,かえって反復回数は増大した.この点に関して,準ニュートン法を用いる方が良いのではないかと疑問が呈せられたが,準ニュートン法を用いた解析は実際に行っており,より良いアルゴリズムの候補としてAitken加速技法を考えたとの回答であった.また,実例に含まれた形質のひとつである脂肪交雑評点は離散的な値をとるスコアであり,この形質が正規分布に従うという仮定の妥当性についての質問も提出されたが,12段階ものスコアがあり,経験的に正規分布を仮定しても差し支えないとの回答であった.

  この2講演は,家畜の育種価評価に関わる重要な問題を扱っていたが,この分野に接した経験のない聴衆にとっては問題の背景がわかりにくかったのではないかと思われる.そのために,活発な質疑応答が展開される場面は少なかった.

座長: 林武司(農業生物資源研究所)

一般講演 III

○Tae-Kun Seo(総合研究大学院大学),Jeffrey L. Thorne(ノースカロライナ大学), 長谷川 政美(統計数理研究所),岸野洋久(東京大学大学院)
「A viral sampling design for testing the molecular clock and for estimating evolutionary rates and divergence times」

  患者から分離されたウイルスの塩基配列データに基づいて,分子進化速度と分子時計に関する仮説を最尤法の枠組みの中でテストする方法が提案された.

○松浦正明(広島大学),江口真透(統計数理研究所)
「レイト・エントリー・バイアスのモデリングと原爆被爆者データへの応用」

  観察期間の途中から対象者の追跡を行なう遅延登録(レイト・エントリー)の統計学的な扱いについて研究報告があった.

○青木敏(東京大学大学院)
「Improving path trimming in a network algorithm for Fisher's exact test in two-way contingency tables」

  分割表データのFisher正確確率検定を,大規模データに対してより効率的に計算するための新しいアルゴリズムが提案された.

座長: 三中信宏(農業環境技術研究所)

特別講演 II

○椿広計(筑波大学)
「探索的層別分析の光と陰」

  一昔前には統計家の間でやや胡散臭い手法とみられていたRegression TreeやClassification Tree に関し,そのユーザーとしても統計家としても経験の深い演者による講演で興味深かった.題名に言う如く,その有用性と潜在する危険性に焦点を当てた講演であった.線形回帰モデルに比べ,とくに非線形な高次の交互作用を検出するのに優れた手法であることと,一方でモデル検証の重要性ならびにそのための手法について述べられた.検証的統計解析とは本質的に異なる手法であるが,とくにこれをデータ解析の始点ではなく終点とせざるを得ないときの様々な考案についても紹介された. 

  聴衆からは,演者の「刺身料理でもネタがよければ美味い」という取りまとめに対して,データマイニング系の研究では,採取したデータの質が大切であるとの意識が弱いので,その辺りを統計側が強調すべきという意見が提示され,演者も実験計画の理念を強調することについて概ね同意した.しかし,演者の呼ぶ刺身料理とは,伝統的なモデルベースの方法に対して,大規模データの探索的層別のような素朴な方法を指していることは再確認された.次に,探索的層別分析の正当化の理論的根拠について,確認があり,演者は一致性に関するT.W.Andersonの先駆的研究が有るのでは,ないかとコメントした.関連して探索的層別分析における樹形モデルの適合を,検証的なモデル当てはめの観点から眺めると,マクロな構造とミクロな構造の適合度検証は分けて考える必要があるなど,まだギャップが大きい旨の指摘があった.演者も,その種の検討の有用性を認めた上で,データが計画的に採取されず大規模になる際の問題は,データの従うモデルが一様でなくクラスター化することであり,所謂,検証的なモデル当てはめの有効性は,データが一様になるような層別を行った後の問題ではないかとの見解が示された.この種のモデルが混合状態になる状況に対するフォーマルなモデリングは「潜在混合モデル」と呼ばれるもので,まさに福永健次氏の特別講演で扱われた話題でもある.その,福永氏からは,樹形モデル選択について演者が若干否定的に示唆したべいズ的選択以外の方法の可能性についてコメントがあった.

  なお,本講演と関連して,応用統計学会誌の関,筒井(2000)論文とそれに対する岩崎,山口(2001)のコメントも参考になる.

座長: 広津千尋(明星大学)

一般講演 IV

○佐藤俊哉(京都大学大学院),松山裕(京都大学大学院)
「治療を繰り返し実施した場合のランダム化にもとづく因果効果の推定」

  3コースに渡って繰り返される急性骨髄性白血病の地固め療法の効果を,プラセボを対照として検討した臨床試験を例に,ランダム化臨床試験から得られる繰り返し二値データに対する解析方法が紹介された.この方法により,因果帰無仮説の検定,コンプライアンスを考慮した因果効果の推定を行うことができる.この推定量は繰り返しがない場合の拡張になっている.


○大橋靖雄(東京大学大学院),佐久間昭(医薬品機構),吉村功(東京理科大学),佐藤俊哉(京都大学大学院),魚井徹(山之内製薬),佐々木秀雄(旭化成),酒井弘憲(三菱東京製薬)

「試験統計家の資格/要件検討WG報告」

  1998年に発効されたICH-E9の中で新薬開発において必須とされている,試験統計家に必要な要件と資格化,教育等について提言するため,1998年3月に計量生物学会内に設置されたワーキンググループ(WG)の活動報告であった.

  試験統計家にはバランスの良い知識と経験が求められている.WGではPh.D取得は必須とはせず,統計学科卒業あるいはそれと同等の学位(フルタイムで1年の専門教育)および3年以上の経験を試験統計家の必要要件とすることで全員が合意した.製薬企業のニーズだけを考えても年間10~20名程度の生産が必要であろう.

  資格をどう与えるのか,という問題については,新たに認定精度を設けると,移行措置として実力の低い経験者が認定されて品質が低下したり,海外との共同開発が盛んになっている昨今,新たな非関税障壁となる可能性があるなどの弊害が考えられる.学会への登録制度程度が順当であろう.医薬分野の会員が半数である本学会が単独で事務処理を行うのは無理があるので,関連学会のコンソシアムのような組織を作り,さらなる検討が必要であろう.

○大橋靖雄(東京大学大学院),吉村功(東京理科大学)
「試験統計家のための修士課程カリキュラム試案」

  日本では,試験統計家の育成・供給が不十分である.それを補うための一方策として大学院の修士課程に社会人コースを設けることを考え,検討した体制とカリキュラムについての報告であった.

  フロア討論は演題14と15をまとめて行った.
  提案された内容での社会人コースの実現可能性はかなり高いとのことである.

○西次男(クインタイルズ),柏木渉(大鵬薬品工業)
「前期第二相臨床試験の症例数設定の試案」

  用量設定を行う前段階としての情報収集を目的として実施されるのが前期第二相臨床試験である.この段階では主として精度の観点から必要症例数が設定される.前期第II相臨床試験における平均値,分散,割合に関する推定精度に基づいた症例数設定方式が示された.1標本の分散の推定精度をもとにした症例数設定と,2標本の割合の差の位置付けをもとにした症例数設定について数値例が示された.フロアからは,臨床試験の目的とそのためのデザインを明確にして整理すると良いのでは,という意見が出た.

座長: 栗原律子(エーザイ(株))

一般講演 V

○John B. Cologne(放射線影響研究所)
「Does comparison group affect power to detect effect modification by demographic factors in risk regression?」

  適切なコントロールグループを用いることはすべての研究において重要なことであるが,不適切なコントロールグループを用いることが曝露効果の指標の修飾に与える影響を特にバイアスの観点から評価がなされた.バイアスに関する単純なモデルのもとで,コントロールグループの背景因子に不均一があれば,効果の指標の修飾を表す(交互作用)パラメータにバイアスが生じることを解析的に示し,その程度をシミュレーションにより評価した.また,広島・長崎の原爆被爆者データの解析を行い,サブサンプルデータから用量反応関係に関する効果の修飾を評価する際には,背景情報の適切な調整が必要であることが示された.フロアからは変量効果モデルを用いてはどうかという意見と示された結果は効果の修飾の推定に関して一般的に成り立つものなのかどうかという質問が出された.

○松永信人(協和発酵),菅野純(国立医薬品食品衛生研究所), 吉村功(東京理科大学)
「相乗性評価のための小動物実験の計画と解析」

  小動物実験において,複数の物質の同時曝露における相加作用の定義として2つの流儀が存在する.ひとつがいわゆる統計的交互作用がない状態(一方(B)の用量を固定したときの他方(A)の用量反応曲線が,Bの用量を変えることで平行移動すること)で,もうひとつが薬理・毒性学の分野で用いられる定義で,2つの物質の応答曲面の等高線が直線になることである.単独物質での用量反応曲線が直線の場合には両者の定義が矛盾しないので,反応や用量に単調変換を施し,変換した3次元空間で反応曲面が平面になることを相加性の定義とすることが提案された.また,相加性からのずれを評価する実験計画として,高用量同士の組み合わせに関しては実験を行わない一部実施(三角)法が提案された.提案した方法の妥当性をシミュレーションにより性能評価した結果が発表された.

○大森崇(国立医薬品食品衛生研究所),本間正充(国立医薬品食品衛生研究所),吉村功(東京理科大学)
「マウスリンフォーマ試験のデータ解析法」

  染色体異常と遺伝子の変化を調べるマウスリンフォーマ試験において,突然変異誘発能の有無を統計的に評価するプロシジャが提案された.従来用いられてきた英国環境変異原性学会 (UKEMS)の評価方法とは異なり,1)実験系列は1系列で,2)Dunnett検定による陰性対照群との比較,3)Down-turn現象の処理,4)重みなしの傾向性検定による評価というプロシジャが提案された.UKEMSとの比較をシミュレーションにより検討した結果,2つの方法でほぼ同じ判定結果となったが,用量反応パターンによっては提案した方法のほうが陽性と判定しやすいものもあることが報告された.提案された評価方法が実際の現場でどの程度有用か(遺伝毒性学の専門家による判断とどの程度一致するか)の評価に関しては今後の検討課題であろう.

座長: 松山裕(京都大学大学院)


一般講演 VI

○辺旗(アストラゼネカ),柳川堯(九州大学大学院)
「Confidence interval in binomial distributions when 0 is observed」

  観測データが0であった場合,2項分布モデルの生起確率pに関する信頼区間の推定法としてどのような方法が妥当であるかが既存の複数手法間の比較を通して報告された.具体的には,1標本比較および2標本比較の双方の場合における片側100(1-a)%信頼区間の正確な計算方法が示された上で,その計算結果とSASおよびStatXact4.0の正確法での出力が比較された.とくに2標本比較の場合は,正確法に加えてその改良法であるBerger and Boos法の効率も再評価された.その結果,1標本比較の場合のSASおよびStatXact4.0は,見かけ上,片側信頼区間のような出力を与えているが実は両側信頼区間が求められていること,2標本比較でのSASの結果は0(もしくはn)が観測された方の標本変動が考慮されていないこと,この場合のStatXactの結果は正確ではあるがやはり両側信頼区間が求められていることが示された.また,StatXactのマニュアルに指摘されているBerger and Boos法の改良効率は一般化できないことが数値例とともに具体的に示された.ただし,この2標本の場合の結果は等標本サイズの下での結論であるので,標本サイズが異なる場合に関しては今後の課題とされた. 

○岩崎学(成蹊大学),安部貴行(万有製薬)
「打ち切り標本に基づく統計的推測 -- 小標本の場合 --」

  データに時間打ち切りがある場合の寿命試験において,指数分布を仮定した場合のパラメータq に関する推測問題が論じられた.通常の解析法の前提条件として,共通の試験期間内に最低でも1例の完全に観測されたデータの存在が必要であるが,実際には完全に観測されるデータの例数mが0となる可能性もあり得る.この視点から本報告では,m>0の条件を付けない下でのパラメータq の最尤推定量の分布を提示し,信頼区間および検定のp値の導出法とそれらの近似法が紹介された.とくに,具体的な数値例が示され,mが小さい場合はm>0の条件のあるなしによって導出される信頼区間の上限が若干異なってくることが示された.また,大標本を仮定した通常使用される近似法のうち,尤度比に基づく手法は,小標本でも条件を付けない場合の正確法によく近似されていることが示された.
   

○李 相吉(筑波大学),金澤 雄一郎(筑波大学)
「Inestimability in Logistic regression with Nonignorably Missing Covariates」

  不完全データ解析において,「無視できない非応答」のメカニズムを明示的に統計モデルに組み込む場合の最尤推定の問題が報告された.具体的には,2項応答回帰モデルを想定しEMアルゴリズムが適用された場合の「推定不能性-すべてのパラメータに対して収束値が得られない」の原因に関して主にシミュレーション実験から考察が与えられた.EMアルゴリズムによる最尤法では,欠損値を取りえる可能な実現値に置き換えそれらの実現値に起りえる可能性を表す確率が重みとして付与される.その下で重み付けの尤度関数の最大化が図られる.この視点から本報告では,「推定不能性」と逐次的に得られる完全データの構造との関連が明らかにされた.

○小川 幸男(京都大学大学院),松山 裕(京都大学大学院),佐藤 俊哉(京都大学大学院)
「Complete case 解析と Multiple imputation の比較 」

  欠測が生じるメカニズムは,完全にランダムな欠測(MCAR),ランダムな欠測(MAR),観測がランダム(OAR)に分けられる.完全にランダムな欠測メカニズム以外の欠測メカニズムに基づく不完全データセットに対して,一部欠測のあるケースを除外する,即ち,完全に観測されたケースのみを対象とする分析を行うと,結果には一般に偏りが生じる.本報告では,母親の喫煙の有無および人種,出生児の低体重の有無を記録した現実の観測データに対して意
図的に欠測を発生させ,完全ケースのみを対象とする分析と多重代入法による分析の結果を元の完全データの分析結果と比較し,シミュレーションによって分析結果の偏りに関する考察が成された.欠測に影響を与える中間変数が存在する場合,その変数を分析モデルに含めることはできなくても多重代入法における欠測データの補填モデルに含めることで,多重代入法による分析の方が完全ケースのみを対象とした分析よりも結果の偏りを小さくできる可能性が示唆された.

座長: 渡辺美智子(東洋大学経済学部)

特別セッション

○テーマ「欠測値や外れ値を含むデータの統計解析」

  この特別セッションでは,効率的な外れ値の探索・検出の方法,欠測値を伴うデータの扱いについて,実際の統計解析でいかに対処しうるかということに焦点を当てて,日頃疫学データや臨床データの解析に携わっておられる5人の専門家の方々に,データ解析での経験を織り交ぜた研究の最前線に関する話題提供をしていただいた.

  各講演を要約すると,大瀧(広島大学)は,正規母集団からのデータに複数の外れ値が混入しているかもしれない状況を想定し,正規分布の母数の頑健推定および外れ値の検出に対して,少数個のサンプルデータからなる多数個のブートストラップ標本に基づいて,高いBreakdown Point を持つコンピュータアルゴリズムを紹介し,簡単なシミュレーションによる処理のデモンストレーションを行った.佐藤(広島大学)は,複数の背景要因の存在を想定した上で正規
混合分布に基づく外れ値の検出方法について論じた.また,その手法を実現する汎用的なソフトウェアの紹介を紹介した.丹後(国立公衆衛生院)は,アンバランス型繰り返し測定データに対する解析方法の必要性について論じ,比例モデルによる共変量効果の調整法を紹介した.松山(京都大学)は,欠測データの解析においては欠測がランダムかランダムでないかが問題となるが,データからそれを決めることはできないことを指摘し,ランダムでない欠測を想定したもとでの結果の感度解析としてInverse Probability of CensoringWeighted (IPCW) 法により行った例について紹介した.大橋・森田(東京大学,第一製薬)は,患者自身の評価によるQOLデータの解析においては,評価時点あるいはその後の患者の状態と欠損とが関連するMissing Not At Randomの問題に対して,現実的な対処法である欠損理由の収集が困難性であることにより,解析上での対応による補完の必要性について論じた.具体的な対処法として,近年提唱されているmultiple imputationやpropensity scoreの利用を含めた手法の概観がなされ,肺癌の臨床試験データに適用した結果が紹介された.

  それぞれの講演の後,各講演者およびフロアからのコメントや質問を交えての自由討論が行われ,外れ値の概念,正規(混合)分布を前提にしたモデルの適用の意義,IPCW法の有効性やimputationに係わる問題点などに関して,活発な質疑討論が繰り広げられた.

オーガナイザー: 大瀧慈(広島大学)

大橋靖雄 大会企画担当理事

○2001年日本計量生物学会第2回理事会議事録要旨

日時: 2001年4月5日
場所: 乳癌臨床研究支援事業事務局
出席者: 岩崎、上坂、大瀧、大橋、折笠、岸野、栗原、佐々木、佐藤(俊)、柴田、丹後、椿(広)、
丸山、三中、柳川、酒井、椿(美)、山岡、吉村、安楽
欠席: 後藤

議題
1. 前回議事録、議事要旨について

承認された。

2. 庶務理事からの報告

 4月6日の総会で報告することになっている「2000年度活動報告」、「2001年度活動予定」について、丸山庶務理事が用意した原稿をもとにして、最終調整をした。

3. 2000年度会計報告、監査報告

・4月6日の総会で報告することになっている「2000年度会計報告」について、椿(美)、佐々木両会計理事が用意した原稿をもとにして、最終調整をした。
・会費の納入率の低さと、未納のまま退会してしまった人が25人もいることが指摘された。
これは未納の年度において、Biometricsを送付するなどのサービスをしていたことになり、財政の悪化につながる。会費滞納者へのサービス停止のタイミングについて、ルールを作ることが提案された。特にIBSへの対策として、IBSからの会費納入請求が来る前に未納者を除いた修正名簿をIBSに送付する方針を確認した。

4. 2001年度予算案

 4月6日の総会で報告することになっている「2001年度予算案」について、椿(美)、佐々木両会計理事が用意した原稿をもとにして、最終調整をした。

5. 2002年度合同年次大会について

日本統計学会、応用統計学会との3学会の合同年次大会を開く方向で進めることを確認した。
会長から 3 学会連絡委員会の名簿が出来ていることが報告された。連絡委員会の議題については、連絡委員会のメンバーに一任し、計量生物学会理事会で議論しないことを確認した。なお会場と時期について、8 月末から 9 月の初めに明星大学で行う予定であることが報告された。

6. 計量生物セミナーについて

参加費に関して、次のことが決まった。
・academic、non-academic の区別をやめて、会員と非会員の区別のみにする。
・非会員にセミナーの機会に会員になってもらうことが望ましく、1万円程度の差が望ましい。今年は会員18,000円、非会員は30,000円、学生会員は13,000円とする。
・賛助会員を増やすために口数に応じて、セミナーに会員金額で参加できる人数が決まる仕組みを検討する。

7. 学会誌について

・佐々木理事が見積りを取ったコンピュータ組版の会社(名前失念)に変更することを決定した。vol.21-2 から上記会社にお願いし、現編集理事の任期中は変更しないことを確認した。
・ニュースレターの廃止に伴い、学会誌に広告を掲載するが、この広告料を1ページあたり30,000円、半ページ15,000円とする。

丸山 祐造 庶務担当理事

○第9回計量生物セミナーのお知らせ

○日時:2001年10月12日(金)午後~13日(土)午前
○場所:富士研修所(静岡県裾野市下和田656)
○参加費(「臨床」、「生物」とも)宿泊代,夕食代,講演要旨集代を含む。昼食代 (1,000円)
は別途。:
     会員       18,000円
     非会員     30,000円
     学生       13,000円
・参加申込み締切:2001年9月20日(「臨床」は先着100名,「生物」は先着40名)なお,8月中の会員の申込みを優先して受け付けます。また,参加申込み時に学会への入会の意思表示をされた方は会員扱いとします。
・申込方法:日本計量生物学会事務局まで,以下の情報と共に
    FAX (03-5467-0482)
あるいは
    E-mail (biometrics@sinfonica.or.jp)  

にてお申込みください。

○ 希望するセミナー(「臨床」あるいは「生物」),参加者氏名(ふりがな),性別(男,女),(喫煙,非喫煙),所属,連絡先(住所,電話,FAX,E-mail),昼食の要不要(10/12,10/13),備考(日帰り参加など)

・テーマ:
「臨床」医薬品開発における薬物動態および薬力学の特徴づけと民族間の類似性
「生物」Bioinformatics: ゲノム情報による遺伝子の探索,機能予測,集団構造と進化の推定

・趣旨ならびにプログラム


「臨床の部」

テーマ:医薬品開発における薬物動態および薬力学の特徴づけと民族間の類似性
オーガナーザー:上坂浩之(日本イーライリリー)

【趣旨】
  医薬品開発の環境はICH-E5(海外データの活用に関するガイドライン)の施行にともない大きく変化してきた。海外の試験を日本の申請における主要な評価資料にできれば,日本で類似の試験を繰り返す必要性が減ずる。そのためには,薬物動態ならびに臨床的有効性について,海外の試験結果との類似性(海外データの日本人への外挿可能性)の評価が重要である。
  このセミナーでは外挿可能性の議論の基礎として,薬物動態学の医薬開発における役割と民族間類似性の評価の方法,および臨床的有効性における類似性の考え方と試験計画について議論する。特に事例を交えて議論をしたい。セミナーの講演内容は概ね以下の予定である。

・医薬開発における薬物動態学の役割:臨床薬理試験の計画と解析および開発計画の立案の基礎的事項についての共通な理解を得ることを目的とする。

・線形薬物動態および非線形薬物動態:線形および非線形薬物動態の定義と形式,およびそれらの性質の医薬品開発における意義を明らかにする。

・薬物動態の線形性の評価と民族間類似性の評価:試験薬物の線形性評価のための試験計画と統計的評価方法について論じる。また,薬物動態の民族間での類似性を示す試験デザインと統計的評価についても議論する。

・母集団薬物動態解析による民族間類似性の評価方法:母集団薬物動態の意義,試験デザイン,統計解析法ならびにそれらの問題点と克服するための方法を議論する。

・薬力学的特性または臨床的有効性に関する民族間類似性の評価:ブリッジング試験を用いた海外データの利用による承認事例がすでに数件報告されている。これらの事例をもとに,類似性評価の考え方,試験デザインおよび類似性評価の方法などを議論したい。

・薬力学的特性ならびに薬物動態試験実施上の留意点:民族間類似性の評価のための実施計画並びに実施方法に関して留意すべき事柄を紹介する。

【プログラム】(予定)
10月12日(金)
13:00-13:05 開会の挨拶
13:05-14:00 菱川 保(武田薬品工業)「医薬開発における薬物動態学の役割」
14:00-14:45 橋本敏夫(ウエルファイド)「薬物動態の線形性の統計的評価方法」
14:55-15:10 休憩
15:10-15:50 伊藤要二(アストラゼネカ)「薬物動態の民族間類似性の評価」
15:50-16:30 関口金雄(ファイザー製薬)「薬物動態におけるBridgingの経験」
16:30-17:15 総合討論

10月13日(土)
9:00-9:45 笠井英史(大日本製薬)「母集団薬物動態解析による民族間類似性の評価方法」
9:45-10:30 中野真子(日本イーライリリー)「薬力学的特性ならびに薬物動態試験実施上の留意点」
10:45-11:30 大石雅彦(ファイザー製薬)「臨床試験データを用いた病態と薬効の民族間での比較-うつ病と抗うつ剤の例-」
11:30-11:55 総合討論(コメントおよび司会:岩崎 学(成蹊大学))
11:55-12:00 閉会の挨拶


「生物の部」


テーマ:Bioinformatics: ゲノム情報による遺伝子の探索,機能予測,集団構造と進化の推定
オーガナイザー:岸野洋久(東京大学農学部)

【趣旨】
  生物の部ではバイオインフォーマティクスをテーマに取り上げます。数々の生物についてゲノム情報が整備されて来るにつれ,データベースから遺伝子やモチーフ,たんぱく質の立体構造に共通する特徴を抽出し,遺伝子ネットワークを再構成することができるようになって来ました。比較ゲノムの考え方により,遺伝子の機能に関する情報を格段に広げる努力がなされています。ゲノム上に数多く配置されたマーカーとの連鎖の強さを測ることにより,病気関連遺伝子や有用形質決定遺伝子の位置を絞り込み,その遺伝メカニズムを推定する方法も充実して来ました。高度に多型なマーカーはDNA指紋として裁判にも用いられ,野生生物の群れ構造
や植物の有効花粉飛散距離を推定するなど,保全生物学にも利用されています。また一方で,社会的重要性から数多くの配列が集積されて来ているインフルエンザウイルスやエイズウイルスを中心としたウイルスのデータは,時系列的に抽出されたもので,宿主適応のプロセスを知る上で貴重な情報を提供します。40億年前に生命が誕生してから現在に至るまでにゲノムに刻まれた進化の足跡は,恐らく私たちの予想をはるかに越えて奥深く,複雑に絡み合っていることでしょう。

 ゲノム情報科学のさまざまな分野で活躍されている方々を講演者にお迎えしました。先生方には分子進化,集団遺伝と保全遺伝学,連鎖解析などゲノム情報から生物集団と遺伝構造を推測し,その進化の構造を捉える試みを,ご自身の研究を中心として,世界の動きを踏まえてじっくりご紹介していただきます。バイオインフォーマティクスを多面的に捉える場を提供したいと考えています。この分野にご関心をお持ちの方は是非ご参加下さい。

【プログラム】
10月12日(金)
13:00-13:05 開会の挨拶
13:05-14:00 阿久津達也(東京大学医科学研究所)「バイオインフォマティクスのためのスコア関数学習アルゴリズム」
14:00-14:55 鬼塚健太郎(松下技研株式会社)「タンパク質構造解析:特徴抽出と予測」
14:55-15:10 休憩
15:10-16:05 北田修一(東京水産大学)「集団の遺伝的構造の推測:経験ベイズと過分散」
16:05-17:00 徐 泰健(総合研究大学院大学)「ウイルスの宿主適応:サンプリング,分子進化,集団遺伝の統合」

10月13日(土)
9:00- 9:55 林 武司・美川 智(農業生物資源研究所)「家畜における遺伝解析:QTL解析から候補遺伝子の単離へ」
9:55-10:05 休憩
10:05-11:00 前田美紀(農業生物資源研究所)「実験生化学の立場から見たバイオインフォマティックス-ある酸化還元酵素に関する研究の一例-」
11:00-11:55 矢田哲士(東京大学医科学研究所)「ゲノム配列からの遺伝子発見」
11:55-12:00 総合討論および閉会の挨拶

岩崎 学・岸野洋久 セミナー企画担当理事

 

○「環境と健康:統計科学からの挑戦」国際会議のご案内

2001年8月30日-9月1日
     於 福岡ソフトリサーチパーク

 日本計量生物学会主催(日本統計学会、応用統計学会、日本計算機統計学会、社団法人環境科学会、日本リスク学会、日本トキシコロジー学会協賛)の国際会議が近づいてきました。高名な研究者が多数参加します。先端の研究、研究者にふれる貴重な機会を、お見逃しなさらな
いよう。日本計量生物学会の画期的な国際的事業に、万難を排してご参加、盛り立てて頂きますよう。
  海外からの招待講演者数名の横顔を紹介します。
★N.Keiding:前Interbational Biometric Society会長、精子数の減少を世界で始めて公表
★L.Ryan:前Biomerics誌(Short Communication)編集長、生殖・発生毒性データ解析分野の世界第一人者、ハーバード大教授
★P.K. Sen:ノンパラメトリック統計学分野で高名な理論的研究者、最近は環境統計学に視点をすえ、統計科学の新しい研究課題を積極的に推進
★C.Portier:NIEHSリスクアセスメント部長、ダイオキシン毒性評価モデリングの世界第一人者
★C.Richardson:最近、仏から英国Inperial School of Medicine疫学教授にスカウトされた階層型ベイズモデリングの高名な研究者、
★Byong-So Kim:韓国Biometric Society会長、変異原生試験データ解析に関する第一人者
★L.Edler:独がん研究所バイオ統計学部長として環境汚染物質の毒性評価研究をリード、国際計機統計学会会長として、計算機統計分野でも活躍
 
    http://www.math.kyushu-u.ac.jp/ISCEP/ 

詳細は、上記ホームページをご覧下さい。

○関連学会のご案内

★ISI 53rd Session -- Seoul 2001 
  International Statistical Instituteの第53回大会がソウルで2001年8月22-29日に開催
されます。詳細はホームページをご覧下さい。
ISI2001のホームページ → http://www.nso.go.kr/isi2001/index.html


その他、関連学会、会議、セミナーなどございましたら、ニュースレター編集担当委員までお知らせ下さい。

○事務局からのお知らせ

住所変更があった場合には、雑誌Biometrics送り先の変更は各自で行ってください。変更連
絡は以下の所にお願いいたします。
 
  本部住所:International Biometric Society
1444 I Street NW Suite 700
Washington,DC 20005-2210,USA
  メールアドレス:ibs@bostromdc.com
  担当者:David Santini

○広報からのお知らせ

<広告掲載のお知らせとお願い>

・学会誌への広告掲載のお願い
雑誌「計量生物学」について
  日本計量生物学会(柳川尭、会長)の学会誌です。
  1年に2回発行する学術雑誌です。
  原則として、6月と12月に刊行することになっています。
  読者は生物統計学の専門家(理論・応用)が中心で、会員数約400名です。
  Circulationは約500部です。

・広告掲載のお願い
  本学術雑誌に広告掲載の募集をいたします。
内容としては、統計学関連の書籍・雑誌、統計ソフト、会議案内、人材募集などで
す。掲載料は1回につき、B51ページで3万円、半ページで1.5万円です。
入稿締め切りは5月1日及び11月1日です。できれば電子化ファイルでご入稿願います。
可能な限り継続的に広告掲載をお願い申し上げます。


問い合わせ・掲載依頼先
  折笠 秀樹
  富山医科薬科大学医学部教授
  930-0194富山市杉谷2630番地
  (FAX: 076-434-5184, E-Mail: horigasa@ms.toyama-mpu.ac.jp)

<情報をお寄せ下さい>

 関連学会、会議、セミナーなどございましたら、ニュースレター編集担当委員までお知らせ下さい。また、生物統計学の発展に資するもの、会員に有益であると考えられるものなどについての原稿等を、積極的にご投稿ください。原稿の送付先は以下の通りです。編集作業の都合上、できましたらEメールでお送りいただけますと幸いです。

 

原稿の送付先:
  〒173-8605東京都板橋区加賀2-11-1
  帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教室
  山岡和枝
  TEL:03-3964-1211(内線2178)
  FAX:03-3964-1058
  e-mail: kazue@med.teikyo-u.ac.jp

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